ヨルダン川西岸で拡大するイスラエル入植地...「トランプ2期目」に期待の声
過去に民主党・共和党双方の政権において中東和平交渉を担当してきたデニス・ロス氏は、トランプ氏の外交政策構想についての独自評価に基づき、「アブラハム合意を拡大したいというトランプ氏の希望が最優先になるだろう」と語る。
「イスラエルが公式に西岸地区を併合したら、サウジアラビアがそうした拡大合意への参加を真剣に考えるはずがない」とロス氏は指摘した。西岸地区が併合されればイスラエルとパレスチナが国家として共存する「2国家解決」に向けた希望はついえ、開戦から1年以上を経て隣接するレバノンにも波及しているガザ紛争の解決も困難になる。
トランプ氏は1期目のうちに駐イスラエル米国大使館をエルサレムに移転し、西岸地区への入植は違法であるという米国政府の長年の立場に終止符を打った。だがトランプ氏は2020年、既存の境界線沿いの土地にパレスチナ国家を創設する計画を示し、地区全体でイスラエルの主権を確立するというネタニヤフ首相の狙いを頓挫させた。
トランプ次期大統領はこの地域に関する方針を明らかにしていない。政権移行チームの広報担当者キャロライン・レビット氏は中東政策に関する質問に回答せず、トランプ氏は「世界中で全力での平和の回復を進めるだろう」と述べるに留めた。
もっとも、イスラエル閣僚でも有数の入植推進派として知られるスモトリッチ財務相は先週、早ければ来年にもトランプ政権の支持を得て西岸地区を併合できるよう希望していると発言した。
イェシャ入植者評議会のイスラエル・ガンツ議長はあるインタビューの中で、トランプ政権がイスラエル政府による併合の推進を「容認」してくれるよう願っている、と語った。
ガンツ議長は11月5日の米大統領選挙に先立ち、シロにあるビザンチン帝国時代の古い教会の遺跡で、トランプ氏の勝利を願う祈祷会を主催した。
「米国の人々とイスラエルをより良い日々に導いてくださるよう神に祈った」とガンツ議長。シロは米国の政治家の視察地としても人気があり、ハッカビー氏や、トランプ氏が国防長官に指名したピート・ヘグセス氏も訪れている。
入植地による包囲網
シロは、隣接する入植地エリとともに西岸地区の中心部近くに位置する。エルサレムからは、きれいに舗装された高速道路「ルート60」で1時間の距離だ。パレスチナの都市を結ぶ荒れた路面の道とは対照的だ。