「眠れる有権者」ヒスパニックが目覚めた...激戦州アリゾナで語った複雑な本音とは?
LATINO AWAKENED
クルスと出会ったアリゾナのアルハンブラは、ヒスパニック住民が多いフェニックスでも、特に彼らの密集度が高い地域とされる。街角には中南米系の料理店や衣料品店が並び、道行く人々の姿も大半がヒスパニックで活気も感じられる。
しかし、この地域の生活の厳しさはすぐに見て取れる。駐車場には事故車なのか、前面や側面が大破した車両が多数放置されている。あちこちの地面には、割れた車のウインドーガラスが粉々になって落ち、一目でよそ者と分かる記者への冷たい視線も感じた。
不法移民対策に共鳴する
投票権を持たない人々を含めて、ヒスパニック住民らと話すと、コロナ禍を境に加速した経済的苦境への強い不満が一様に聞かれた。その姿は、トランプ支持者が自らを語る際の「忘れられた人々」に重なる。
「極端な苦難に直面しながら、彼らに救いの手が伸べられることはあまりなかった」と指摘するのは、人種間の社会格差に詳しいアリゾナ大学のリサ・サンチェス助教だ。
「コロナ禍でエッセンシャルワーカーと位置付けられながら、現業職に就いているが故に、(白人など)他のグループと比較して解雇対象になりやすく、家族や友人にコロナで死ぬ人も多かった」
アリゾナ州の22年の世帯収入の中央値は、白人の約7万6000ドルに対しヒスパニックは約6万3000ドルと20%ほど低い。失業率は今年に入って3.9%と、白人(3.0%)より1ポイント近く高い。