最新記事
報復攻撃

イスラエルの対イラン空爆、旧核兵器実験棟など標的=米研究者

2024年10月28日(月)10時43分
10月26日のテヘラン

10月26日、 米研究者はイスラエルが実施したイランへの空爆について、過去にイランの核兵器開発計画の一部だった建物が攻撃を受けたとの分析を明らかにした。写真はテヘラン。26日撮影(2024年 ロイター/Majid Asgaripour/WANA (West Asia News Agency))

米研究者はイスラエルが26日実施したイランへの空爆について、過去にイランの核兵器開発計画の一部だった建物が攻撃を受けたとの分析を明らかにした。ミサイル用固体燃料を混合する施設も攻撃されたという。

米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)の所長で元国連核兵器査察官のデービッド・オルブライト氏は衛星画像を基に、テヘラン近郊のパルチン軍事施設内の建物が攻撃を受けたと指摘した。

イランが過去に進めた核兵器開発プログラム「アマド計画」で実験棟に使用していた「タレガン2」と呼ばれる建物を攻撃したことが分かったという。

国際原子力機関(IAEA)や米情報機関によると、イランは2003年にアマド計画を中止した。イランは核兵器開発を否定している。

オルブライト氏は著書執筆の目的で、イスラエルの情報機関モサドが2018年に入手した同計画の資料閲覧が認められた。

同氏はイランが重要な実験装置をタレガン2に保管していたことが資料から判明したとし、空爆前に重要資材を移動した可能性もあるが、内部に装置が全く残っていなかったとしても、この建物は将来の核兵器関連活動に「本質的価値」を提供しただろうと述べた。

同氏によると、タレガン2から約300メートル離れた建物3棟が被害を受けたことも画像から分かった。うち2棟では弾道ミサイル用固体燃料の混合が行われていたという。

米シンクタンクCNAのアナリスト、デッカー・エベレス氏も衛星会社プラネット・ラボが提供したパルチンの画像を基に、イスラエルが弾道ミサイル用固体燃料を混合する建物3棟と倉庫1棟を破壊したと分析した。

また、広大なミサイル生産施設があるテヘラン近郊のホジルも攻撃したと述べた。弾道ミサイル用固体燃料の混合が行われていた建物2棟が破壊されたという。

同氏はこうした混合装置について、製造が難しく、輸出規制されており、イランは何年にもわたり多額の費用をかけて輸入してきたことから、置き換えるのは難しい可能性が高いと指摘。

イスラエルの攻撃は限定的だったが、イランのミサイル大量生産能力に著しい打撃を与えた可能性があり、イランが将来的にイスラエルのミサイル防衛を突破する攻撃を仕掛けるのはより困難になったとの見方を示した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米関税に「断固たる対抗措置」、中国国営TVが短文サ

ビジネス

米2月PCE価格+2.5%、予想と一致 スタグフレ

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

ウクライナ、過去の米軍事支援を「ローン」と見なさず
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中