コワモテ国家ハンガリーが、異次元の優しい家庭政策で出生率アップに成功している

HUNGARY’S MAGIC WAND

2024年10月23日(水)19時46分
此花わか(ジャーナリスト)

newsweekjp20241023101515-199ac0a2d2941ae5690e6f15cb62535943b36198.jpg

オルバン政権は長期有給休暇制度やローン免除などの家族・出産支援策で出生率をV字回復させた CSIKIPHOTO/SHUTTERSTOCK

ハンガリーの「ファミリーフレンドリー」という理念は、社会における家族の役割を認識し、家族を優先して支援しなければ、少子高齢化という人類の危機に対応できないとの理念に基づく。

第2次大戦後、ソ連が牛耳る共産圏国家だったハンガリーは国内産業が発展せず、1989年の民主化以降、近隣の豊かな西ヨーロッパへ流出する若者の数が増大し、深刻な社会問題となっていた。家族を持ちたくないと考える人は多く、当時の出生率はEUで最下位レベル。そこへ09〜10年、EU経済危機が起こる。


人口が少ないハンガリーでこれ以上少子化や人材の流出が続くと、国を維持できない。けれども西側の豊かな国のように移民を積極的に受け入れるとどうなるのか。

「人口の少ないハンガリー人、そしてハンガリー文化が消滅してしまいかねません」と言うのは、欧州経済社会評議会(EESC)のヨー・キンガ委員だ。

こうした背景からオルバン政権は大胆な家族政策へと舵を切り、2010年からの14年間、家族政策を国家の最優先として、財源を2倍以上に、予算をGDPの6.2%まで増やした。これはGDP比においては世界一の支出だ。「ハンガリーの家族政策は、子どもを持つことを『リスク』ではなく、『価値のあるもの』という社会意識へシフトするのが目的です」と、ヨー委員は付け加える。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中