最新記事
デマ

「移民が犬や猫を食べている」と言われた町がいま願うこと

Springfield Bomb Threats Coming From Overseas Bots: Mayor

2024年9月18日(水)18時16分
ダン・グッディング
スプリングフィールドの住民

スプリングフィールドに住んで40年になるというカップル(9月15日) USA TODAY NETWORK via Reuters Connect

<テレビ討論会でトランプが主張したデマのせいで、全米の注目を集めているオハイオ州スプリングフィールド。数十件の爆破予告への対応にも追われ、町は大混乱だが>

アメリカ中西部オハイオ州の都市スプリングフィールドは、このところ全国的な注目を集めている。9月10日のテレビ討論会で、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ前大統領が、スプリングフィールドでは、ハイチからの移民がペットの犬や猫を食べていると主張したからだ。

【動画】ぎこちないスピーチ...拡散されたハリス米副大統領のフェイク動画

それから一週間、ドナルド・トランプ前大統領と、彼の副大統領候補でオハイオ州選出のJ・D・バンス上院議員が唱え始めた、移民が「ペットを食べている」という根拠のない主張で同市は大変な混乱に巻き込まれている。

トランプ発言の後、5日ほどの間に同市の市役所、医療施設、学校、大学には33件を超える爆破予告があった。オハイオ州のマイク・デワイン知事は16日、その多くが海外からのものであり、すべてがでっちあげだったことを明らかにした。

「嫌がらせ目的のプログラムとみられ、どれも同じような発信元から、同じような文言で発信されている。間違いなく危険なもので、断固として捜査を続ける」と、スプリングフィールド市長のロブ・ルーは17日のインタビューで述べた。

犬猫を食べているという話は事実ではないと否定する一方、移民の流入による急激な人口増加のため、市が難題に直面しているのは事実だと、ルーは言う。

市にはここ数年で1万2000人から1万5000人の人口流入があり、さらに増える可能性がある、とルーは本誌に語った。

つまり、当初5万8000人〜6万人だった市の人口は、20%〜25%も増加。予算不足で、救急、医療、教育サービスを圧迫している。ホームレスや住宅費の高騰、失業などの問題もある。

憎悪ではなく支援を

「この市の住民は助けを必要としているのであって、国家の頂点に立とうとする人々からの憎しみは必要ない」と、ルーは言う。

「11月の選挙でこの問題に決着がつくとは思えない」と、ルーは本誌に語った。「出てくる解決策といえば、国境に壁を作るか、完全に穴だらけにするかのどちらかだ。現実の役に立たない」

スプリングフィールドへの注目は今も止まず、脅迫も続いているため、地元の2つの大学は対面講義を1週間中止し、リモート授業に切り替えた。

移民の流入に不満を抱いている住民もいるが、新しい隣人を支持し、彼らを受け入れたいと思っている住民も大勢いると、ルーは言う。

「1~2週間でこの問題が忘れ去られても、悪いイメージを一掃する仕事が残る」と、ルーは付け加えた。


ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国GDP、第1四半期は前年比+5.4% 消費・生

ビジネス

報復関税、中国の医薬品価格押し上げか 大手各社が米

ビジネス

午前のドルは142円後半へ小幅安、日米交渉前に手控

ビジネス

中国新築住宅価格、3月は前月比横ばい 政策支援も需
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中