最新記事
タルムード

親から子へと世代を超えて継承する「ユダヤの叡智」人生を豊かにする格言10選

THE WISDOM OF THE TALMUD

2024年9月13日(金)18時12分
石角莞爾(国際弁護士、改宗ユダヤ教徒)
親から子へと世代を超えて継承する「タルムード」の叡智

YEHOSHUA HALEVI/ISTOCK

<「貧しい者に手を差し伸べよ」「捨てなければ道は開けない」「ノーペイン、ノーゲイン」...日常生活の中でより良い選択をするための道標>

世界的企業の創業者やノーベル賞受賞者など、ユダヤ人は多くの優秀な人材を輩出している。

その背景には、ユダヤ人が信じる『ヘブライ語聖書』(キリスト教でいう旧約聖書)をベースに、ヘブライ学者やユダヤ教徒が2000年にわたって日常生活の戒律について交わした膨大な議論をまとめた「タルムード」や口伝律法「ミシュナ」の存在がある。

ユダヤ人家庭では、これらの議論に基づいて、親から子へと世代を超えてユダヤの知恵が継承されている。

◇ ◇ ◇



どんなに裕福な金持ちであっても、助け合いの心を持たない人間は、豪華な料理に塩がないのと同じである

「貧しい者に手を差し伸べよ」という教えは、聖書のあちこちに書かれている。この教えは母親から子へと語り継がれ、貧しい人や弱い人を救うことを教える。またユダヤ社会は貧しい人々をボランティアたちが協力して支える。ただユダヤ人は勤勉なので、いつまでも他人の世話にはなりたがらない人が多い。

◇ ◇ ◇


最も良い教師とは、最も多くの失敗談を語れる教師である

ユダヤ教の学習会の議論では、失敗談を話し合うことが最も奨励される。ユダヤ人は、迫害の歴史の中で苦難や失敗に追い込まれることが多かった。だから苦難や失敗を大切にし「なぜ間違えたのか」に大きな関心を注ぐ。間違えた道を分析すれば、正しい道を見つけられるからだ。

◇ ◇ ◇


この世には人を傷つけるものが3つある。悩み、いさかい、空の財布。3つのうち空の財布が最も人を傷つける

ユダヤ人はお金を至上のものとは考えないが、見下したり軽蔑したりすることも決してない。「心の平穏は財布次第だ」と、心身共に健全でいるためにはある程度のお金が要ると教えられる。そして、お金は人生において扉を開ける「大切な鍵」という認識を持っている。

◇ ◇ ◇


今日あなたは、自分の穀物倉庫を見て穀物の量を数えようとした。その瞬間にあなたは神から見放される

この格言は、お金や物など「数えられるもの」に幸せは宿らないという教えで、「今日はこれだけ儲かった」「今月の収入はいくらだ」と考えた瞬間に、ユダヤでは「神の庇護がなくなる」と言われている。お金儲けに一喜一憂することを、聖書の中で明確に否定している。

◇ ◇ ◇


「ノーペイン、ノーゲイン」大切なものを失わなければ何も得ることはできない

何かを得るためには必ず失うものがある。何も失わず、成功することなどあり得ない──ユダヤ人の子供たちが幼い頃から親にたたき込まれる、金銭哲学を超えた人生哲学だ。捨てる時期も重要だ。まず大切なものを捨てよ、と教える。捨てなければ道は開けないのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヒズボラ指導者、通信機器爆発は「宣戦布告」 イスラ

ワールド

南ア中銀、0.25%利下げ FRBに続き緩和路線

ビジネス

米中古住宅販売、8月は2.5%減の386万戸 価格

ワールド

ハリス氏とトランプ氏、全国で支持率拮抗 激戦東部州
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 3
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高められる次期首相は高市氏だ
  • 4
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエ…
  • 5
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    「気持ち悪い」「正直言って変...」サブリナ・カーペ…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 10
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に…
  • 6
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 7
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 9
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 10
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中