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ユダヤ

世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何なのか? 聖書と歴史から読み解けば世界の「今」が見えてくる

THE PROMISED LAND

2024年9月12日(木)15時19分
嶋田英晴(同志社大学一神教学際研究センター共同研究員)

イスラエル軍の避難命令を受けてさまようパレスチナ自治区ガザの住民

イスラエル軍の避難命令を受けてさまようパレスチナ自治区ガザの住民 RAMEZ HABBOUBーABACAPRESSーREUTERS

ユダヤ人はなぜ「優秀」か

ユダヤ人はよく優秀な人物や大富豪を数多く輩出すると言われる。しかしその理由について説明することは極めて困難である。

ユダヤ人はしばしば迫害や追放を受けたため、持ち運ぶのが可能なものは自分の頭にしまい込める知識や知恵であるとして、教育や学問を極めて尊ぶ精神や環境が大きく作用していることは間違いない。しかしここでは、ヘブライ語聖書に登場する1つのエピソードに的を絞って考えてみたい。


「創世記」に登場するヤコブは、祝福を求めることに対して誰よりも貪欲であった。ヤコブは兄エサウから長子権を奪っただけでなく、父イサクをだましてその祝福をも得た。

さらに後に彼は神と格闘し、これに勝利するや否や、神による祝福を求めた。そして神から祝福を授かっただけでなく、もはやヤコブではなく「イスラエル」と改名するようにと告げられた。「イスラエル」とは、「神と人(複数形)と争い、これを克服する者」を意味する。

ユダヤ人は主に知的領域において常に神と格闘し、ユダヤの神はこれに対し「よく付き合って」くださる。ヤコブと神と人々との格闘に象徴される精神活動を通して、ユダヤ人の知的活動は比類なき奥深さと独自性に至る。

ヤコブは兄のエサウと和解し祝福を返したが、この「格闘」は現在のユダヤ人に引き継がれている。

問題は祝福としての「神の意志」の解釈である。ユダヤ人が祝福を自利のみと解釈すれば、世界に未来はないだろう。しかし彼らが祝福を自利・利他的なものと捉えるならば、まだそこに希望は残っている。

〈参考文献:『ユダヤ文化事典』(丸善出版)〉

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