最新記事
ユダヤ

世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何なのか? 聖書と歴史から読み解けば世界の「今」が見えてくる

THE PROMISED LAND

2024年9月12日(木)15時19分
嶋田英晴(同志社大学一神教学際研究センター共同研究員)

1948年5月のイスラエル建国時に、欧州を逃れてイスラエルに向かう船に乗ったユダヤ人移民の群衆

1948年5月のイスラエル建国時に、欧州を逃れてイスラエルに向かう船に乗ったユダヤ人移民の群衆。建国以来、イスラエルと周辺のアラブ諸国の間では4回の戦争が起きている REUTERS

聖書の記述によれば、荒野で40年間の時を過ごしたイスラエルの民は、その間に律法に則した生活を送った。

モーセの没後、後継者ヨシュアの下でカナンへと侵入したイスラエルの民は、カリスマ的指導者である士師たちに従ってカナンの地の征服を進め、王国を築いた。第2代王のダビデはエブス(エルサレム)を攻略し、そこを首都としてカナンの全てを統治した。


彼の下でイスラエルの民に対する神の約束が成就した。次の王ソロモンは、モーセが神から授かった十戒の石板を納めた「契約の箱(アーク)」を安置する壮麗な神殿をエルサレムに建設し、その治世下でイスラエル王国は繁栄を極めた。

しかし、ソロモン王の死後王国は北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂し、イスラエル王国はアッシリアによって、ユダ王国は新バビロニアによって滅ぼされた。この時神殿もエルサレムも破壊され、上層の人々はバビロニアに連行された(バビロン捕囚)。

彼らは故国の滅亡の原因を、軍事力の強弱ではなく、唯一の神に対する信仰の多寡の問題と捉えたため、彼らは異邦人の地において、食物規定、安息日、割礼の遵守などの独自の規定を厳守することにより、自らを移住地の社会から切り離し、選民イスラエルとしてのアイデンティティーの維持に努めた。

やがて新バビロニアを滅ぼしたペルシア帝国のキュロス王により故地カナンへの帰還が許され、カナンに帰還した民によりエルサレムの神殿が再建された。もっともバビロンおよびその周辺にとどまった者も少なくなかった。

その後、祭司エズラによるトーラー(律法)の朗読がなされ、ユダの民の悔い改めが行われた。後にペルシア帝国はアレクサンダー大王によって滅ぼされ、その支配の下でユダの民はヘレニズム文化と対峙して自らを「ユダヤ人」として強く自覚するようになった。

ユダヤの地を支配したギリシャ系の王朝であるセレウコス朝がユダヤ人にヘレニズム文化を強制(偶像崇拝)したため、ユダヤ人は反乱を起こして独立を勝ち取った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

損保協が政策株で指針、保有実態変えない純投資株への

ビジネス

再送-日経平均は続伸、FOMC通過後の円安を好感 

ビジネス

中国、20日に政策金利引き下げの見通し 米大幅利下

ビジネス

午後3時のドルは小幅高142円半ば、過度な米利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエルのハイテク攻撃か
  • 3
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 4
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 5
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 6
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高…
  • 7
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 10
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に…
  • 7
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 8
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 9
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中