公的調査では見えてこない、子どもの不登校の本当の理由
こうした生徒は、学校の側にすれば「無気力(怠惰)」と映るのかもしれない。文科省の調査(学校回答に基づく)で小・中学生の不登校の要因をみると、最も多いのは「無気力・不安」で全体の50.9%を占める。
しかしながら、同じ選択肢を用意して当事者に尋ねてみると、回答の分布はかなり違っている。小・中学生の不登校の要因について、文科省と民間団体の調査結果を並べてみると<表1>のようになる。
文科省調査では「無気力・不安」が50.9%とダントツで多いが、不登校児の保護者を対象とした民間調査では12.8%でしかない。「教員との関係をめぐる問題」は、学校回答では1.8%だが、保護者回答では15.8%。
この表ではパーセンテージの差が大きい順に回答を並べていて、上にあるのは「学校<保護者」、下にあるのは「学校>保護者」の差が顕著であることを意味する。学校側は当人の性向や親の問題と考えているのに対し、当事者の側は学校の問題、ないしはいずれにも該当しない、もっと深い要因と考えているようだ。
政策立案の参考にされるのは学校回答のほうで、不登校対策として「当人の生活習慣の改善」「心理カウンセリングの充実」といったことが提言されるが、学校の在り方も問わねばならない。かといって、現場の教員に「自分の行いに自覚的であれ」とか「子どもと血の通った関係を作れ」とか説教を垂れるのはいただけない。
時代の変化についていけない学校
社会はすごい速さで変わっているが、学校はそれについていきにくい。時代錯誤の校則もはびこっていて、教員はそれを守らせる番人としての役割を負わされ、生徒との軋轢を生じさせている。多忙を極めている状況では、子どもと血の通った関係を作ろうにも作れない。まずは、基底の部分を見直すことだ。
もっと大きく言うと、社会の情報化が進む中、知識を授ける殿堂としての学校の立ち位置は揺らいでいる。この点が認識されたためか、不登校児への支援の最終目標は「学校に来させること」ではなく「当人の社会的自立」であると、公的文書にも明記されるようになった。そのための手段は多様であって、学校外の機関(フリースクール等)での学習や、インターネットを使った自学自習も積極的に評価されることとなった。
令和の時代の教育(学び)は、学校の教室という四角い空間だけで行われるものではない。
<資料:文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(2022年度)、
信州居場所・フリースクール運営者交流会『不登校(傾向を含む)実態調査』(2023年)>