最新記事
米軍

沖縄・嘉手納基地に偵察ドローン「リーパー」を配備、対中情報戦と「日本の防衛支援」

US Marines deploy Reaper to contested airspace near China

2024年8月29日(木)17時16分
ライアン・チャン
沖縄の嘉手納基地にリーパーを運んできた大型輸送機C-17グローブマスターIII

沖縄の嘉手納基地にリーパーを運んできた大型輸送機C-17グローブマスターIII(8月13日) Sgt. Gabriel Antwiler/U.S. Marine Corps

<中国軍機が第一列島線周辺の空域で不審な飛行を繰り返していることから「太平洋の要石」沖縄に複数の監視・偵察用ドローンを追加配備することに>

米海兵隊は、戦略的に重要な日本の沖縄などに複数の偵察ドローンを配備した(具体的な数は不明)。

【動画】攻撃型にもなるリーパー

8月26日に報じられたところによれば、沖縄県にある米軍嘉手納基地に、米海兵隊の訓練支援のためとして無人偵察機MQ9A「リーパー」が配備された。

米海兵隊・第一海兵航空団の報道官は米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」に対して、これで日本の防衛を支援する能力が向上すると述べた。

リーパーは中高度・長時間滑空型の無人機(ドローン)で、海兵空地任務部隊に配属されている。翼幅は約20メートル、全長約11メートルで最大滑空時間は27時間。遠隔操縦または完全自律飛行で運用される。

長距離飛行能力を活用した情報収集や偵察能力を備え、紛争環境下では海兵隊の沿海域作戦を支援する。海兵隊は紛争区域内で任務を遂行するために、無人機能力を拡大・強化する必要があると結論づけている。

沖縄県は東シナ海とフィリピン海の間に位置しており、中国が勢力圏を確保するため独自に設定した軍事的防衛ラインの一つで、九州沖から沖縄、台湾、フィリピンを結び南シナ海に至る「第一列島線」の上にある。米軍による一連の中国封じ込め戦略は、中国の軍事活動をこの防衛ライン内に制限することを目標としている。

newsweekjp_20240829073159.jpg

武装可能なリーパーも

MQ9Aリーパーの配備は、中国の軍用機が複数回にわたって第一列島線周辺で作戦を展開したことを受けて行われた。8月23日には、台湾と日本の最西端の島・与那国島の間の幅約110キロ弱の航路「与那国ギャップ」の上空を中国の無人機2機が通過した。

報道によれば、リーパーは米海兵隊第三無人航空機飛行隊が運用。ハワイを拠点とする同飛行隊は2008年に活動を開始して以降、さまざまなドローンを運用しており、2023年8月にはリーパーの初期運用能力を獲得した。

日本の防衛省の沖縄防衛局は沖縄の各自治体に対して、米海兵隊のドローン最大6機が嘉手納基地に配備され、情報収集や監視・偵察活動を行うと通達した。一時的な配備であり、展開期間は1年だと「スターズ・アンド・ストライプス」は報じている。

米海兵隊が26日に公開した写真には、8月13日に米空軍の輸送機によって嘉手納基地にリーパーが運び込まれる様子が映っている。第一海兵航空団の報道官は、運用上の安全への配慮から、配備されたドローンの数を明かしていない。

嘉手納基地には2023年10月以降、このほかに既に10機のドローンが配置されている。このうち8機は米空軍のリーパーで、残り2機は米海軍のMQ4C「トライトン」だ。トライトンの運用期間は10月までの予定になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市経済安保相「低金利続けるべき」、追加利上げをけ

ワールド

アングル:「世界の工場」目指すインド、ライバル中国

ワールド

焦点:トランプ陣営、激戦州勝利へ賭けの戦略 照準は

ワールド

トランプ氏、移民強制送還を表明 オハイオの「ペット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    クルスク州「重要な補給路」がHIMARSのターゲットに.…
  • 7
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 8
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 9
    ロック界のカリスマ、フランク・ザッパの娘が語る「…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 5
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 9
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 10
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中