ヒズボラが大規模報復攻撃、イスラエルは先制 紛争拡大に懸念
ヒズボラは25日、イスラエルによる最高幹部殺害の報復として、同国に対し数百発のロケット弾と無人機を発射した。写真は国境のレバノン側で上がる火の手。(2024年 ロイター/Aziz Taher)
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは25日、イスラエルによる最高幹部殺害の報復として、同国に対し数百発のロケット弾と無人機(ドローン)を発射した。イスラエル軍はヒズボラが大規模攻撃を準備していることを事前に察知し、約100機の戦闘機でレバノンの標的を攻撃したと発表した。
過去10か月以上にわたる双方の交戦で最大規模の衝突の一つとなった。
レバノンで3人、イスラエルで1人の死亡が確認された。双方ともさらなる緊張激化を避けたい考えを示唆する一方、追加攻撃の可能性も警告した。
ヒズボラは320発以上の「カチューシャロケット」を発射し、11カ所の軍事目標を攻撃したと明らかにした。これにより報復の「第一段階」が完了したが、完全な対応には「しばらく時間がかかる」とした。
ヒズボラの指導者ナスララ師は攻撃が「計画通り」に完了したとしながら、攻撃の影響を評価した上で「結果が不十分なら別の機会に対応する権利を留保する」と述べた。
イスラエルのカッツ外相は、イスラエルは地上での情勢変化に応じるが、全面戦争は求めていないと述べた。一方、ネタニヤフ首相は「物語はこれで終わりではない」と警告。また、「先制」攻撃によってより大規模な攻撃を阻止したと強調した。
ヒズボラのシュクル司令官は先月、ベイルート郊外でイスラエルの空爆により殺害され、両者の間で緊張が高まっていた。
関係者によると、ヒズボラはパレスチナ自治区ガザの停戦協議に時間を与えるため報復を遅らせ、全面戦争を回避するため攻撃を調整したという。
ナスララ師はヒズボラの攻撃について、テルアビブ周辺の情報機関拠点に集中させたと説明。ネタニヤフ氏はイスラエル中部の戦略的拠点を狙った無人機は全て迎撃したと述べた。
ヒズボラはイスラエルの攻撃で戦闘員2人が死亡したと発表。ヒズボラに近いシーア派グループのアマルも戦闘員1人が死亡したと明らかにした。
イスラエル軍は海軍の兵士1人が死亡、2人が負傷したとしている。
テルアビブの空港を発着する便は約90分にわたって中断された。レバノンのベイルート発着便も一部が中断された。
<地域紛争への懸念>
イスラエルとヒズボラの緊張が高まったことで、米国とイランを巻き込むより広範な地域紛争が起こるのではないかとの懸念が高まっている。
米ホワイトハウスはバイデン大統領が状況を注視していると述べた。米国家安全保障会議(NSC)のサベット報道官は「(バイデン氏の)指示により、政府高官はイスラエル側と継続的に連絡を取っている。われわれはイスラエルの自衛権を支持し、地域の安定のために努力し続ける」と説明した。
米当局者によると、米政府はイスラエルによる今回の攻撃に関与していないが、ヒズボラの攻撃準備について情報を提供したという。
国連のグテレス事務総長は緊張激化を「深く懸念」していると表明し、イスラエルとヒズボラ双方に直ちに敵対行為を停止するよう求めた。
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