最新記事
越境攻撃

ウクライナに国境を侵されたロシア、「とてつもなく大きな」反撃を用意か

Kyiv Braces for Russia's 'Huge' Retaliation

2024年8月13日(火)17時06分
エリー・クック
プーチン

ウクライナ軍がロシアのクルスクやベルゴロドに侵攻した件で軍や安全保障トップと会議を開いたプーチン(8月12日、モスクワ郊外) Sputnik/Gavriil Grigorov/Kremlin via REUTERS

<ウクライナ軍に領土を奪われ住民を退避に追い込んだロシア軍は、このままでは国境を守る力がない無能な軍として国民の不興を買う。プーチンも同じだ>

ウクライナ軍がロシア国境地帯のクルスク州に進軍を続けるなか、ウクライナはロシアからの「とてつもなく大きな」反撃に備えている。

【動画】国境近くを走るウクライナ戦車、ウクライナ戦車をドローンで破壊するロシア兵

ウクライナ国防当局のある高官(匿名)は英タイムズ紙に対して、「ロシアはきわめて厳しい対応を取らざるを得ない。国際社会に対して、ロシアは全能でありクルスク州への攻撃のようなことをすれば必ずその罰を受けると示すような対応だ」と述べた。

8月6日、ウクライナ軍は同国北東部のスーミ州から国境を越えてロシア西部のクルスク州に入り、攻撃を開始。すぐに複数の地域を制圧した。ロシア側にとってこれは、約2年半前にウクライナとの全面戦争が始まって以降、最も本格的な越境攻撃だ。

ロシア政府はこれまで国民に対し、これまでウクライナ軍の侵略を阻止してきたのはロシア軍だと述べてきたが、ロシア政府の11日の報告は、ウクライナとの国境から最大30キロ入った地点にあるオプシチー・コロデツを含む複数の集落で戦闘が行われていることを示唆している。

ロシア国防省は12日、ウクライナ軍が前日にオプシチー・コロデツの東にある集落カウチュク周辺を「突破」しようと試みたと発表。ロシア軍が、ウクライナ軍の戦車1両と(アメリカから供与を受けた)ブラッドレー歩兵戦闘車8両を破壊したと明らかにした。本誌はこの情報について、独自に確認を取ることができなかった。

クルスク州で28の集落を制圧

ソーシャルメディア上には、ウクライナ軍の兵士たちがクルスクの集落にあるロシア国旗を引き下ろし、ウクライナ国旗と取り替える様子とみられる動画が出回っている。

ロシア政府はまた、国境地帯の複数地域でウクライナ軍撃退のための「対テロ作戦」を展開している。作戦を率いるのは、ソ連時代のKGB(国家保安委員会)の後継組織であるFSB(連邦保安局)だ。

米シンクタンクの戦争研究所は11日、ウクライナ軍が過去数日でクルスク州の西部と北西部に進軍した可能性が高いと述べた。

クルスク州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は、12日のウラジーミル・プーチン大統領との会議の中で、ウクライナ軍が州内の28の集落を制圧し、これらの集落の住民2000人が行方不明になっていると報告した。

またスミルノフは、クルスク州の国境地帯からは約12万1000人が避難たとも述べた。隣接するベルゴロド州のビャチェスラフ・グラトコフ知事も、地元当局が国境地帯近くに暮らす住民の避難を開始したと明らかにした。

ロシア当局は今回の事態に「かなり困惑しており、領土の喪失と民間人の避難は、ロシアに自衛能力がない証拠としてロシア国内で不評を買うだろう」と、英シンクタンク「王立統合軍事研究所(RUSI)」の軍事科学担当ディレクター、マシュー・サビルは、指摘した。

プーチンは先週、ウクライナによる越境攻撃を「大規模な挑発行為」と称し、12日には、「われわれの領土から敵を追い出す」べきだと述べたと、ロシア政府は発表した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中