最新記事
越境攻撃

ロシア西部クルスク州にウクライナ侵入、激戦続く 非常事態宣言

2024年8月8日(木)11時50分
ウクライナが越境攻撃をしているロシア西部クルスク州で6日撮影

ロシア国防省は7日、ウクライナと国境を接する西部クルスク州で、越境攻撃を実施しているウクライナ軍との激しい戦闘が続いていると明らかにした。 提供写真。ロシアのクルスク州で6日撮影(2024年 ロイター/Acting Governor of Kursk Region Alexei Smirnov via Telegram/Handout via REUTERS)

ロシアは7日、ウクライナと国境を接する西部クルスク州にウクライナが侵入し、ロシア軍との間で激しい戦闘が続いていると明らかにした。

クルスク州には主要な天然ガス輸送拠点のほか、原子力発電所がある。ウクライナのガス輸送事業者によると、ロシア産天然ガスの欧州向けの輸送は現時点で異常はない。

今回のウクライナによるロシア領侵入は、2022年2月の全面侵攻開始以降で、最も規模が大きいものの一つ。クルスク州のスミルノフ知事代行は、国境地帯に非常事態を宣言した。ロシア保健省によると、子供6人を含む民間人31人が負傷。軍人の死傷者に関する情報は得られていない。

ロシア国家警備隊は、クルスク原子力発電所の警備を強化した。一部ブロガーは、ウクライナがクルスク原発への進攻を計画している可能性があるとの見方を示している。

ロシア軍のゲラシモフ参謀総長はプーチン大統領に対し、ロシア軍が1000人の兵士による攻撃を阻止したと報告した。兵士の数はロシア国防省の7日の発表の3倍以上となる。

ウクライナは6日にクルスク州に対する越境攻撃を開始。ロシア国防省によると、戦闘は7日にかけても続き、ウクライナ側の勢力はクルスク州スジャの北西に進撃した。スジャはモスクワの南西530キロメートルの地点にあり、ウクライナ経由で欧州に輸出されるロシア産天然ガスの積み替え地点。スジャの北東60キロの地点にはクルスク原子力発電所がある。

ロシアの軍事ブロガーによると、ウクライナは国境から約10─15キロメートル内側の地帯まで侵入。激しい戦闘が続いているという。

ロシアのプーチン大統領は7日、「大規模な挑発行動があった」とし、ウクライナはクルスク州の民間施設を「無差別」に攻撃していると非難した。

ウクライナはこの件についてコメントしていない。ウクライナのゼレンスキー大統領も恒例のビデオ演説でこの攻撃については触れなかった。

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、米政府はクルスク州での状況について、ウクライナ当局と連絡を取っていると言及。ロシア国境付近に限定して容認している米国供与の兵器使用に関する規制は引き続き有効だが、ウクライナの行動はこの規制に違反していないと述べた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中