最新記事
米軍

イスラエル支援で米軍は能力の限界、太平洋の守りが手薄に

The Already Stretched U.S. Military Prepares to Defend Israel

2024年8月7日(水)18時30分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

イランも、外交上の警告や安全に関する通達を出すなど、攻撃の意図を予告している。5日の朝までに、イランは領空を閉鎖するよう通告した。

ドイツの航空会社ルフトハンザは、ベイルート、テルアビブ、テヘランへのフライトをキャンセルし、アメリカをはじめとする西側諸国は、自国民に対し、レバノンや近隣諸国から一刻も早く脱出するよう促している。

「これは作用・反作用の典型的な症状だ」と、コンサルティング・グループ、トレンズ・リサーチ・アンド・アドバイザリーの米中東安全保障問題専門家ビラル・サーブは言う。

「イランが単独で何をしようとしているかは問題ではない。それに対してイスラエルが何をするかが重要だ。報復合戦が完全に手に負えなくなるとは思わないが、同時に、このような力関係が働くたびに、標的が少しずつ大きなものになっていくため、戦いが拡大するリスクも高まる」

イスラエルに大規模な報復攻撃を仕掛ける場合、イランにとって障害となるものがいくつかある。ひとつは、イランのミサイル発射台は数に限りがあることで、大規模な巡航ミサイルや弾道ミサイルの一斉射撃を行いたくても限界がある。

そうなると、前線からは距離があるイスラエルの中枢を攻撃することは難しくなるが、イランは代理人のネットワーク、特にイスラエルの北に位置するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを使うことでその点を克服することもできる。

ヒズボラは先日のイスラエル国防軍による空爆でヒズボラ幹部のフアド・シュクル司令官が殺害されたことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の極右政権にやはり恨みを抱いている。

防衛システムにも負担

だがイスラエルは2023年10月7日以降、パレスチナ自治区のガザでハマスとも戦闘を続けており、重武装したヒズボラともほぼ毎日のように報復合戦を続けている。そのため、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」に多大な負担がかかっている。

イスラエルはアメリカの支援を得て、アイアンドームの砲台の補充を続けているが、イランとヒズボラの全面攻撃が始まればシステムの対応が難しくなるのではないかと危惧する専門家もいる。

「弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機を保有する国は、西側諸国が保有する対弾道ミサイル、対巡航ミサイル、対無人機システムよりも多くの攻撃用兵器を保有している」と、ミラーは言う。

イランがイスラエルを攻撃するために、ミサイルではなく、主にシャヘド無人機を使うなど、よりコストの低い攻撃を行うことを決めた場合、動きの遅い無人機は早期警戒システムによって検知され、防空システムで一機ずつ撃ち落とされる可能性がある。

ただし、それは周辺地域の援助があれば、の話だ。ヨルダンのようなアメリカの同盟国は助けてくれる可能性が高いが、エジプトはすでに、イスラエルの防衛を支援しないと公言している。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中