トランプが勝てば危機に瀕する米欧の民主主義
LIBERAL DEMOCRACY HANGS IN THE BALANCE
三権分立、自由で公正な選挙、法の支配、少数派に対する憲法上の保護、表現の自由といった基本的権利を特徴とする西欧の自由民主主義は、第2次大戦とその後の冷戦におけるアメリカの勝利の結果だ。アメリカがリベラルな民主主義の原動力と模範としての役割を放棄するなら、リベラルな西側諸国、とりわけヨーロッパが危うくなる。
トランプが勝利すればヨーロッパ中で極右・民族主義政党を後押しすることとなり、アメリカがウクライナ支援を打ち切ればロシアは有利になる。EUの取り組みは大きな危機を迎える。ヨーロッパがナショナリズムに逆戻りすれば、私たちは自らの運命を決定し、子や孫のために平和と自由を確保する最後のチャンスを無駄にする。
大国間の対立、グローバルサウスの台頭、先進国の少子高齢化による経済の弱体化、新たな技術革命──そうした地政学的な環境の変化を考えれば、ヨーロッパが明日の世界を形づくるチャンスは今しかない。
11月5日の米大統領選には、多くのことが懸かっている。ここリベラルなヨーロッパで私たちが知る世界は、11月6日の朝に消えているかもしれない。
ヨシュカ・フィッシャー
JOSCHKA FISCHER
左翼活動家から政治家に転身。ドイツ緑の党の中心人物として、ヘッセン州環境・エネルギー相などを歴任した後、シュレーダー政権では連邦外務大臣兼副首相を務めた。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら