最新記事
考古学

エジプト北部で数十基の古代墓と金箔工芸品を発見

Mass Discovery of Ancient Egyptian Tombs Reveals Numerous Gold Artifacts

2024年8月2日(金)15時00分
アリストス・ジョージャウ
新たな考古学的発見、エジプトの末期王朝時代を浮き彫りに Jordi Orts Segalés-Unsplash

新たな考古学的発見、エジプトの末期王朝時代を浮き彫りに Jordi Orts Segalés-Unsplash

<テル・エルディール遺跡で末期王朝時代の墓63基と貴重な金箔工芸品が見つかった>

エジプトで古代の墓数十基と大量の工芸品が発掘された。中には目の覚めるような金箔で作られた美術品もあった。

【画像】エジプトの末期王朝時代の巨大な墓、金箔工芸品と共に発見

末期王朝時代のものか

エジプト考古最高評議会が統括する考古学調査団は、エジプト北部の地中海に面した都市ニューダミエッタにあるテル・エルディール遺跡で、泥レンガの墓63基と複数の簡素な埋葬地を発見した。

エジプト観光・考古省の発表によると、墓は末期王朝時代(紀元前664~332年)のものと思われる。

その中に、社会的に高い地位にあったと思われる人々が埋葬された「巨大な」墓があった。墓の中からは、宗教的シンボルや人物をかたどったものなど、さまざまな形をした金箔の工芸品が見つかった。

さらに、プトレマイオス朝後期の青銅貨数十枚が入った陶磁器の器や、現地で生産されたり輸入されたりした陶磁器も発掘された。輸入品の陶磁器は、古代都市ダミエッタと地中海沿岸の都市との交易関係を浮かび上がらせている。

プトレマイオス朝とは?

プトレマイオス朝は、アレクサンダー大王がエジプト(当時はペルシャに支配されていた)を征服した紀元前332年に始まった。その後、プトレマイオス王国として知られるヘレニズム政治が紀元前305年に確立され、紀元前30年にローマ帝国に征服されるまでエジプトを支配した。

ニューダミエッタの発掘では、古代エジプトの葬儀で使われた小像ウシャブティ像の出土も注目される。ウシャブティ像は、死後の世界で死者に仕えさせるため、墓に安置されていた。

観光・考古省によると、テル・エルディールで新たに見つかった墓の配置は、末期王朝時代の別の墓にも見られる配置だった。

考古最高評議会のモハメド・イスマイル・ハレド事務局長はテル・エルディール遺跡の今回の発見について、古代のダミエッタがさまざまな時代を通して国際交易の中心地だった事実を浮き彫りにしたと指摘する。

7月には、ナイル川の水底に隠された古代エジプトの美術品や碑文が見つかったという発表もあった。

観光・考古省の発表によれば、美術品はナイル川流域のアスワン近郊で、エジプトとフランスの合同考古学調査団が発見した。

当時この場所に存在していた集落は戦略的に重要な位置にあり、王朝時代のエジプトの南の国境に面していた。

(翻訳:鈴木聖子)

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中