最新記事
米大統領選

バイデン撤退とカマラ・ハリス登場を影で仕掛けた大物政治家とは

PELOSI GOT IT DONE

2024年7月30日(火)14時04分
ジル・フィリポビッチ(ジャーナリスト、弁護士)
バイデンとペロシ

ペロシ(右)は繰り返し撤退を否定したバイデンに圧力をかけ続けた TAYFUN COSKUNーANADOLU/GETTY IMAGES

<大統領に引導を渡したのは、負け試合に甘んじることを断固拒否した民主党大物議員ナンシー・ペロシだった>

再選を目指した米大統領選を撤退し、後継の民主党候補者としてカマラ・ハリス副大統領を支持する──。ジョー・バイデン大統領の決断はある意味、自身の権力が終わりに近いと悟った80代男性の最後の政治的賭けだ。彼は賢明にも、より若い女性政治家にバトンを渡そうとしている。

だが別の視点から見れば、本当の「主人公」は、もう1人の80代の政治家だ。過去半世紀の間、大抵の政治家よりも効果的に影響力を駆使してきたその女性は、培った経験と権威を活用して、おそらくほかの誰にもできなかったことをしてみせた。


どちらの見方も間違っていないが、内実にずっと近いのは後者のようだ。

その女性、ナンシー・ペロシ下院議員は勝つことが好きだ。しかも、この数十年間に活躍してきた民主党政治家の誰よりも、勝つ方法を熟知している。11月の米大統領選で民主党候補が勝利を収めるとしたら、それは主に、負け試合に甘んじることを断固拒否したペロシのおかげだ。

撤退表明前のバイデンとの電話会談で、ペロシは数字を並べて戦況の不利を説明したという。これにバイデンは、勝利の可能性が残っていることを示す世論調査データを目にしたと答えた。「(バイデン最側近のマイク・)ドニロンと話をさせて」と、ペロシは言ったとされる。「どの世論調査か、教えてください」

ペロシに近い筋が米政治ニュースサイト、ポリティコに語ったところでは、ペロシはバイデン撤退を公の場で要求することは望んでいなかった。だが、内々には「撤退実現のためなら何でもする」つもりだったという。バイデンの顧問や家族が口にしようとしなかったらしい「現実」を、本人に直接伝えることも......。

「グッチの手袋に包まれた鉄拳」

かつてポリティコが「グッチの手袋に包まれた鉄拳」と形容したペロシが、あからさまなやり方をすることはめったにない。表向きには大統領支持を貫く一方、バイデンが繰り返した撤退否定を受け流し、撤退に向けて圧力をかけ続けた。

ペロシ自身も近年、権力を手放す決断をしている。民主党下院院内幹事になったのは2002年。翌年には下院院内総務になり、07年に下院議長に就任した。いずれも女性として初めての出来事だった。だが82歳になった22年、米政治が長老支配と化しているとの懸念が膨らむなか、民主党下院トップを退くと表明。当時52歳だったハキーム・ジェフリーズ議員にその座を譲った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中