最新記事
米大統領選

米副大統領候補バンス氏「ウクライナをプーチンに引き渡す」、トランプ氏より「過激」との声 欧州で警戒感

2024年7月17日(水)11時31分
トランプと副大統領候補のバンス上院議員

11月の米大統領選に向け、ウクライナ支援に反対姿勢を示すJ・D・バンス上院議員(右)が共和党の副大統領候補に選ばれたことで、欧州当局者の間で警戒感が強まっている。15日撮影(2024年 ロイター/Brian Snyder)

11月の米大統領選に向け、ウクライナ支援に反対姿勢を示すJ・D・バンス上院議員が共和党の副大統領候補に選ばれたことで、欧州当局者の間で警戒感が強まっている。

選挙戦でトランプ前大統領が返り咲きを果たせば、トランプ・バンス政権の下、米国がウクライナ支援を打ち切るか縮小し、ウクライナが和平交渉に追い込まれることが懸念されている。

ドイツのショルツ政権の一端を担う「緑の党」のラング共同党首は、バンス氏の副大統領候補への指名について「欧州にとり憂慮すべきこと」と述べた。

バンス氏は今年2月のミュンヘン安全保障会議で、ロシアのプーチン大統領は欧州にとり実存的な脅威ではなく、欧米がウクライナの勝利のために十分な軍事支援を供与することできないと主張。米国の戦略的優先事項はアジアと中東にあると示唆していた。

緑の党のラング氏はこうしたバンス氏の見解について、トランプ、バンス両氏がいかに早く「ウクライナをプーチン氏に引き渡す」かを浮き彫りにしていると述べた。

ドイツ社会民主党(SPD)のシュミット外交問題報道官もロイターに対し、「バンス氏はウクライナ問題でトランプ氏よりも過激な立場を取っており、軍事支援の終了を望んでいる。外交政策の点では、トランプ氏よりも孤立主義的だ」という認識を示した。

バンス氏は今年4月に米国で成立したウクライナ支援法の採決で反対票を投じた。2022年には「ウクライナで何が起ころうと、あまり気にしていない」と述べていた。

しかし、ラストベルト(さびた工業地帯)と呼ばれるオハイオ州の貧しい労働者階級出身のバンス氏について、性急に結論を出すことを警告する声もある。

ウクライナ支援を訴える米国拠点の慈善団体「ラゾム・フォー・ウクライナ」の幹部は、バンス氏の生い立ちを考えれば「米国のウクライナ支援が唯一の選択肢と結論付けるのではないか」とし、「副大統領としてバンス氏の見解が進化していくことを期待している」と述べた。

フランスの外交官も、米大統領選はまだ終わっていないと強調。「自己達成的な予言を作り出すのをやめる必要がある。トランプ氏はまだ勝ってはいないし、バイデン氏は負けてない」とくぎを刺した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中