バイデンの勇気ある撤退が民主党...そして「ジャーナリズムの世界にも」好機である理由
Wake Up, Democrats!
とはいえ、ハリスにも不安はある。2020年大統領選のとき、ハリスは当初、民主党指名候補の座をバイデンと競い合ったが、自陣の政策顧問と激しく対立するなど、彼女の選対本部は極めて混乱していたことで知られている。
ホワイトハウス入りしてからも、ハリスの側近は交代が激しい。ロイター通信は7月3日、ハリスが大統領候補に指名されることは不可避と報じる記事で、関係者は興奮というより、仕方がないという様子だったと指摘している。
誰にせよ、大統領候補が自由投票で選ばれた場合、民主党はすぐにその人物支持で結束する可能性が高い。
消費者団体パブリック・シチズンのアーロン・リーガンバーグはX(旧ツイッター)で、バイデンに代わる「トランプに勝てる候補」を見つけなくてはいけないという切迫感は、既に党内でイデオロギーを超えた結束をもたらしていると明かす。
これはどの潜在的候補にとっても、めったにない好ましい環境といえるだろう。さらにバイデンが、人格攻撃など醜い戦術を取る候補は支持しないと表明すれば、代替候補が前代未聞のスピードで一本化されるだろうと、ニューヨーク・タイムズ紙のジョナサン・オルター記者は言う。
8月19〜22日に開かれる民主党全国大会に向けて、健全かつ正々堂々たる候補者争いが展開されれば、「民主主義の実践者」という民主党の評価も高まるだろう。かねてから党幹部は、今回の大統領選は「民主主義の存続が懸かった選挙」と位置付けてきたから、絶好のチャンスだ。
有権者は新鮮さを熱望
もちろん、各候補の言動が連日メディアの話題を独占することも、党にとってプラスとなる。どの世論調査でも、大多数の有権者は、トランプでもバイデンでもない候補者を求めている。そもそもアメリカの大統領選で、2回連続同じ顔触れの候補がぶつかることは珍しい。
5000人近い民主党の代議員が、全く新しい大統領候補を検討するプロセスは、新鮮な候補を求める有権者の思いに応える措置だ。民主党は民主主義を重視していることのアピールにもなる。
潜在的な候補者には、短期間のうちに全米のメディアからインタビューやテレビ出演の依頼が殺到し、TikTok(ティックトック)などソーシャルメディアでの露出も爆発的に増えて、民主党関係者だけでなく全米で知名度が高まるだろう。
ついでにいうと、それはコロナ禍や混沌としたトランプ時代に、暗いニュースばかり読むことに辟易していた人々を、再びニュースメディアに引き戻すという意味で、ジャーナリズムの世界にも好ましい影響を及ぼす。
バイデンと民主党の決断に注目したい。
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