最新記事
軍事協力

ロシアの背後を脅かすNATOと航空自衛隊の共同訓練

Japan and NATO Allies Flex Air Power on Russia's Eastern Flank

2024年7月23日(火)19時00分
ライアン・チャン
日本上空の独ユーロファイター戦闘機

航空自衛隊のF-15戦闘機2機(後方)と、日本に到着したドイツ空軍のユーロファイター2機とA330MRTT空中空輸機(7月19日) GERMAN AIR FORCE 

<日本の上空で、共通の敵ロシアに対抗するための共同訓練が行われている。そのためにフランス、ドイツ、イタリア、スペインから戦闘機や支援機が集う>

NATOと日本は、ロシアという共通の脅威を念頭に、軍事協力を深化させている。今夏も、ヨーロッパの複数国の空軍が、アジア北東部に位置する日本の周辺に航空機を展開させた。

【画像】百里基地に到着した仏ラファール戦闘機

日本の自衛隊の情報によると、NATOとの一連の共同演習は7月19日に始まり、8月8日に終わる予定だ。ヨーロッパ側の参加国はフランス、ドイツ、イタリア、スペイン。日本を含め、いずれもアメリカの同盟国だ。

NATOがインド太平洋地域での役割を拡大する中で、日本は、同地域におけるNATOのパートナーとなっている。2年前がロシアがウクライナに本格侵攻を始めてからも、日本政府は一貫してウクライナ支援の姿勢を明確にしている。

ヨーロッパで主権国家のウクライナを攻撃するロシアと、日本は領土問題を抱えている。極東の北方領土は今も、ロシアの実効支配下にある。

ロシア外務省は6月28日、モスクワにある日本の駐ロシア大使館に宛てた抗議文書のなかで、ロシア極東地域の沿岸でNATOと共同で軍事演習を実施するという日本政府の決断は「容認できない」と主張した。

ドイツ軍の発表によると、フランス、ドイツ、スペインの空軍機が、インド太平洋地域における共同演習「パシフィック・スカイズ24」に派遣されている。

8月にはイタリア空軍が参加

フランス空軍と日本の航空自衛隊が参加する2日間の戦術訓練演習は、7月19日に始まった。フランス空軍は、茨城県の百里基地にラファール戦闘機4機と、支援機計6機を派遣した。航空自衛隊のF-2戦闘機2機も、この演習に参加した。

同時に、ドイツとスペインの空軍に所属するユーロファイター戦闘機計12機と支援機計10機が、日本のF-15戦闘機4機とともに、日独西共同訓練を実施した。

この共同訓練は、日本北部に位置する重要拠点である千歳基地で実施された。宗谷海峡などロシアの軍艦が近くを通過するこの海域で、日本はこの基地から領海の監視を行なっている。

「ニッポン・スカイズ24」と銘打ったこの4日間の共同訓練は22日に始まり、日本のF-15戦闘機、ドイツ空軍のユーロファイタータイフーン3機、ドイツ軍の支援機計3機が参加した。

一方、8月6日から3日間にわたって実施される共同訓練「ライジング・サン24」には、イタリア空軍が、ステルス戦闘機のF-35 ライトニングII4機と、ユーロファイター タイフーン4機に加え、支援機計3機が参加する予定だ。

三沢基地で実施されるこの共同訓練には、日本側からもF-35A戦闘機4機が参加する。三沢基地は、本州北部の青森県にあり、米軍と日本の自衛隊が共同で使用する。

日本での共同訓練ののち、欧州各国の空軍機および要員は、ハワイとオーストラリアに向かい、さらに2つの共同訓練に参加する予定だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「黒海・エネルギー停戦即時発効」、ロ

ワールド

ロシア大統領府、黒海の安全航行確保などの合意を確認

ワールド

ウクライナ、米仲介の対ロ停戦合意を支持=国防相

ワールド

米アップル、ブラウザー巡るEUの制裁金を回避の見込
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中