トランプを「バカ」と揶揄した副大統領候補...「39歳ベストセラー作家」J.D.バンス上院議員とは?
7月15日、米共和党の副大統領候補に選出されたジェームズ・デービッド・バンス上院議員(写真)はかつて、トランプ前大統領を「ばか(idiot)」で「非難すべき人物」と呼び、同僚との私的なやりとりで「アメリカのヒトラー」とも揶揄(やゆ)したが、今やトランプ氏擁護の急先鋒の一人となった。ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党全国大会で撮影(2024年 ロイター/Mike Segar)
米共和党の副大統領候補に選出されたジェームズ・デービッド・バンス上院議員(39)はかつて、トランプ前大統領を「ばか(idiot)」で「非難すべき人物」と呼び、同僚との私的なやりとりで「アメリカのヒトラー」とも揶揄(やゆ)したが、今やトランプ氏擁護の急先鋒の一人となった。
バンス氏のように態度を180度変えてトランプ氏の側近になった例は他にあまりない。
民主党員や一部の共和党員はバンス氏の転身について、政治思想ではなく日和見主義に基づいている可能性を指摘する。
一方、トランプ氏や同氏の助言役の多くはバンス氏の転身が「本物」だと感じている。一国主義と経済ポピュリズムをミックスさせたバンス氏の政治信条がトランプ氏と一致し、両氏ともに外交タカ派や自由市場の伝道師が影響力を持つ党の旧勢力と意見が対立していると指摘する。
バンス氏が師と仰ぐワイオミング州選出のジョン・バラッソ共和上院議員はロイターに対し、バンス氏がトランプ氏に対する見方を変えたのは「大統領として国にもたらした成果を見たからだ」と説明。
ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に反対するバンス氏の姿勢は、トランプ氏の最も保守的な盟友を喜ばせた。
保守派コメンテーターのタッカー・カールソン氏は、バンス氏が「トランプ氏の主張を理解し、同意している」とロイターに語った。
異例の経歴
バンス氏はオハイオ州南部の貧しい家庭に生まれた。近郊のペンシルベニア州やミシガン州などを含む「ラストベルト(さびた工業地帯)」でトランプ氏の得票を押し上げるとの期待もあるが、バンス氏の保守的見解が穏健派を遠ざける可能性もある。
海兵隊に所属後、エール大ロースクールを経てサンフランシスコでベンチャーキャピタリストとして勤務。2016年に出した回想録「ヒルビリー・エレジー」がベストセラーとなり一躍有名になった。同著では故郷が直面している社会経済的問題を探求し、貧困にあえぐ白人の間でトランプ氏が人気を集める背景を説明しようと試みた。
16年大統領選やトランプ氏の1期目序盤において、バンス氏は同氏を強烈に批判。16年の同僚宛てのフェイスブック上のメッセージで「トランプ氏はニクソン(元大統領)のような単なる皮肉屋のろくでなしで、結果それほど悪くなくむしろ役に立つ可能性があるのか、それともアメリカのヒトラーと見なすべきかどうかで揺れている」と書いている。
ヒトラー発言が最初に報じられた22年、広報担当者は否定することなく、もはやバンス氏の見解ではないと述べた。
バンス氏は22年に上院議員選に出馬。その時は既にトランプ氏に忠誠心を示しており、トランプ氏の推薦を受けて予備選で勝利した。
バンス氏はメディアのインタビューで、トランプ氏に対する見方が変わった「決定的瞬間」はなかったと語っている。