最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」...滑空爆弾の「超低空」発射で爆撃成功する映像

Video shows Ukrainian jet's 'pop-up' maneuver to drop glide bombs on Russia

2024年6月29日(土)19時54分
ジーザス・メサ
ウクライナ戦闘機が滑空爆弾を発射

dragunov/Shutterstock

<標的から離れた場所からでも、正確に攻撃を行うことができる「滑空爆弾」は、防空システムでの検知や迎撃が困難>

ウクライナ軍のミグ29戦闘機が「ポップアップ(急浮上)」機動を行いながら、フランス製AASM-250「ハンマー」滑空爆弾を発射してロシア軍の拠点を攻撃する様子を捉えた動画が、ソーシャルメディア上に出回っている。ロシア国内からのミサイル攻撃に悩むウクライナは、こうした技術を駆使して遠隔地への攻撃を強化しようとしていると見られる。

■【動画】ウクライナ機、超低空から「滑空爆弾」発射...防空ミサイルを「神回避」し、ピンポイント爆撃成功の瞬間

問題の動画には、ミグ29戦闘機が超低空から高精度爆弾を投下した後、ミサイル回避の機動を取る様子が映っている。この戦術は、戦闘機が敵の防空システムによる検知・迎撃を回避しつつ爆発物を投下する際に有効になる。

ロシアのテレグラムチャンネル「Milinfolive」はこの動画を投稿し、「現在、敵(ウクライナ)は前線近くの低高度からだけではなく、高高度および遠く離れた場所からも、西側製のさまざまな爆発物を投下している」と伝えた。

このアプローチにより、戦闘機はより離れた場所から爆発物を投下し、標的に向けて爆発物を「滑空」させる一方で、長距離対空防空システムに検知・迎撃されるリスクを最小限に抑えることが可能だ。

「ロシアの防空システムや戦闘機がかなりの数にのぼるため、それに対応するためにウクライナは西側から供与を受けた航空爆弾を使うようになっていくだろうと我々は予想していた」と同チャンネルはつけ加え、2022年12月以降のウクライナ軍の戦略変更を指摘した。

6月下旬にはロシア軍が滑空爆弾でハルキウを攻撃

滑空爆弾とは、簡単に言えば通常の爆弾を改造して翼やナビゲーションシステムを搭載し、標的に向かって滑空することを可能にしたものだ。最初からこのような設計に基づいて製造された滑空爆弾もあれば、後から改造されたものもある。

ロシアの英字新聞「モスクワ・タイムズ」によれば、「滑空」機能の追加により爆弾を「これまでよりもずっと遠くまで移動させる」ことが可能になり、「無誘導爆弾よりもはるかに正確に」標的を攻撃することが可能になる。

6月22日にはロシア軍がウクライナ東部のハルキウを滑空爆弾で攻撃し、甚大な被害をもたらした。ロシア領深部から発射された滑空爆弾は標的まで約50~70キロメートル滑空して標的に到達し、着弾時に大規模な破壊をもたらした。

ウクライナ側は、多くのウクライナ防空システムの射程外から発射される滑空爆弾への対応に苦慮している。アメリカはウクライナがロシア領内で特定の兵器を使用することを制限しており、これがウクライナの防衛の取り組みをさらに複雑化させている。

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中