最新記事
米大統領選挙

イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」

THE MUSK-TRUMP BROMANCE

2024年6月27日(木)15時48分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)
イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」

PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY AFP-GETTY IMAGES AND OMAR MARQUESーGETTY IMAGEーSLATE

<環境技術の旗手だったはずのイーロン・マスク。パリ協定からのアメリカの離脱を受け、一度はトランプと決別したはずだった。そんな二人が今、急速に距離を縮める>

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月末、テスラやスペースXのCEOを務めるイーロン・マスクと、ドナルド・トランプ前米大統領との関係が深まっていると報じた

2人の親密さは「月に何度も電話で話をする」ほどで、大統領への返り咲きを狙うトランプの選挙運動や、「次期」トランプ政権の下でマスクが手にできるかもしれないビジネスチャンスについて語り合っているという。

再選された暁には政策顧問にならないかとトランプがマスクに打診したともウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている(マスクは否定)。確かに最近のマスクの振る舞いは、甘い汁を吸うためにトランプの歓心を買おうとしている一部の人々とまるで変わらない。


トランプが不倫の口止め料をめぐる裁判で有罪評決を受けた際の、マスクのX(旧ツイッター)への投稿がいい例だ。

セコイア・キャピタル(シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル)の幹部が、評決の直後に30万ドルをトランプ陣営に寄付したことをたたえたり、「(評決は)アメリカの司法システムへの社会の信頼を大きく傷つけた」と主張したり。

右派風刺メディア「バビロン・ビー」がこの評決をネタにした記事へのリンクを投稿すると、爆笑の絵文字と共にリツイートもした。

インターネットで目立つのが大好きで、おまけに世界は自分を中心に回っていると考えがちな2人が手を組んだのは、状況を考えれば当然の成り行きだったのかもしれない。

トランプ不倫裁判の表決を受けてのマスクの投稿

個人としても選挙資金としても喉から手が出るほどカネを欲しているトランプ。あからさまな人種差別や極右的な陰謀論への肩入れがやめられないマスク。

両者の間では、個人的にもビジネス面でも人的ネットワークの重なる部分が広がっている。トランプは大口献金を狙って、有罪評決に反発する富豪たちに擦り寄っているからなおさらだ。

トランプとの関係強化により、マスクの実業家として、そして著名人としてのアイデンティティーの根っこにあったものは行き場を失った。マスクは今後の自分のブランディングや行動をどうしていくかという点で、明らかな転換点に立っている。

マスクが「政治家や企業経営者らに顔が利くテクノロジー業界の超大物」として世界に名をとどろかせるとともに、ベンチャー企業の創業で巨万の富を得た他の人々とは一線を画する存在になったのは、アメリカの産業を気候変動との戦いにおける武器にするという一見不可能な使命に向けて熱意を持って取り組んだ故だった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中