韓国観光業界が嘆く「中国人が戻ってこない」理由
3つ目は円安だ。多くの中国人は海外に旅行するなら日本と考える。メーデー連休を前にした今年4月、中国の旅行関連サイトで日本ツアーの検索が前年同時期の3倍に達したという。
中国を訪れる韓国人も増えることはない。24年第1四半期の仁川と北京を結ぶ航空便の利用者は14万9165人で、コロナ前の19年第1四半期の27万1568人やTHAAD配備の影響が大きかった18年第1四半期の25万5195人と比べて55%〜58%水準にとどまっている。
米中関係の悪化と中国の景気後退で、中国事業を縮小し、また生産拠点を中国からベトナムに移転するなど、韓国企業の「脱中国」が加速し、出張需要が減っているのだ。 韓国輸出入銀行によると、中国に進出する韓国企業は10年前の13年には800社を超えていたが、23年は4分の1以下の205社にとどまっている。
中国からの個人輸入が増える
人的往来が減るなか、「アル・テ・シュ」と呼ばれるアリエクスプレス、テム、シュインの物量が伸びている。韓国統計庁が公表した昨年1年間の中国からの個人輸入は3兆2872億ウォンで、22年の1兆4858億ウォンと比べると2倍以上、コロナパンデミック前の19年の5倍に増えている。
円安も訪中を阻害する。韓国人が中国を訪れる場合、観光ビザの取得費がかかるうえ、発給まで4~5日待つことになる。加えて人民元はいまだ高い。その点、日本旅行ならビザは不要、また円安で比較的、安価に楽しめる。中国製品は通販で購入し、旅行は日本を訪れるのだ。
中韓往来を当て込んだ航空便は通販貨物を満載しているという。旅客機が通販貨物を運ぶ傍ら旅客を運んでいるのである。
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