「サウジアラビア v アラブ首長国連邦」中東地域の主導権をめぐる静かなる地政学争い
A HIDDEN RIVALRY
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<ガザ紛争と地域の平和的共存を目指す動きの水面下で、アラブ世界は今後、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の地理経済的競争に焦点が移って新しい時代を迎える>
イスラエルとハマスの戦争は、平和的共存が地域の新しい潮流になりつつあるなかで始まった。
こうした中東の変化を象徴するのが、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の同盟関係がかつてないほど緊密に見えることであり、それぞれの国で実権を握るムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相とムハンマド皇太子の友好的に見える関係だ。
2017年にサウジアラビアとUAEは、アラブ世界でソフトパワーを拡大しようとするカタールに対抗して断交に踏み切った(21年に和解)。
14年から続くイエメンの内戦では15年に両国が軍事介入を行い、親イランのシーア派武装勢力のフーシ派と対立している。そして、それぞれが中国とロシアに接近し、アメリカとの同盟関係から距離を置いた、より独立した政策を取っている。
ただし、この友愛的に見える同盟関係の水面下で、アラブ世界の主導権をめぐる地政学的争いが静かに繰り広げられている。
まず、外国投資をめぐる大規模な競争だ。09年に湾岸協力会議(GCC)の中央銀行の本部をサウジアラビアの首都リヤドに置くという決定にUAEが反発し、GCCの通貨統合は今も実現していない。
12~22年のUAEの投資流入額の対GDP比はサウジアラビアの約3.5倍に達し、主な多国籍企業の中東本部の約7割がドバイにある。
一方、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で22年に原油価格が高騰し、サウジアラビア経済は8.7%の成長を達成。国内への大規模な資本流入を生んだ。
また、サウジアラビアはペルシャ湾地域に進出している外国企業に対し、自国領内に本社を移転するよう強く迫っている。
サウジアラビア(世界最大の石油輸出国)とUAE(同5位)のエネルギー政治の綱引きは、両国の競争をさらに激化させている。
21年夏には、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど主要産油国で構成されるOPECプラスの減産措置の延長をめぐって両国が公然と対立した。その後、サウジアラビアが主導権を握っていることにUAEが異議を唱え、OPEC脱退を検討するかもしれないという噂が流れた。
経済多角化のビジョン対決
国際社会における威信をめぐる競争では、権威ある国際会議の開催を通じてソフトパワーを増強するために戦略的な投資を重ねている。
サウジアラビアは17年に未来投資イニシアチブ(FII)を設立し、UAEは23年にUNCTAD(国連貿易開発会議)の世界投資フォーラム(WFI)を首都アブダビで開催した。
21年にはUAEがドバイで中東初となる国際博覧会(万博)を開催。サウジアラビアは30年にリヤドで開催する。また、昨年12月にドバイで国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が、今年2月にアブダビでWTO(世界貿易機関)閣僚会議が開催された。