優秀だが鼻につく男の「開き直り」...マクロンの電撃解散2つの狙いとは?
MACRON’S BIG GAMBLE
右派政党は決裂の危機に瀕している。共和党では右派陣営が国民連合との連携を呼びかけ、党内で猛反発を招いた。フランスの政局は大混乱の瀬戸際にある。
失うものは何もないと開き直ったマクロンはポーカーでいう「オールイン」、イチかバチかの賭けに出た。
自分が行動を起こせば巻き返しは可能だと彼が考えるのは、今に始まったことではない。マクロンは常に自分が一番で、政治は彼を中心に回っていると思い込んでいる。
加えてマクロンの予想では、国民連合が総選挙に勝利し政権を取れば、国民は次の大統領選挙の前に極右政党の本性を知ることになる。政権運営の重責を初めて担う国民連合は、支持者の期待に応えられないかもしれない。
27年の大統領選にルペンが敗れるなら、マクロンは祖国に尽くしたと胸を張り、悔いなく大統領の座を降りることができる。だが賭けが裏目に出たら? 既に傷の付いたマクロンのレガシーは、さらなる大打撃を被るだろう。
ザキ・ライディ
ZAKI LAÏDI
パリ政治学院教授。ジュネーブ大学などでも客員研究員を務める。専門はグローバル政治と国際関係論。ジョセップ・ボレル欧州委員会副委員長の特別顧問なども兼ねる。