最新記事
朝鮮半島

【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開き1カ月前にはなかった平地が出現。狙いは軍事行動か

North Korea Satellite Images Show Mysterious Activity Along Border

2024年6月11日(火)17時56分
ジーザス・メサ
戦術ミサイルの視察をする金正恩

戦術ミサイルの視察をする金正恩(5月14日、場所不明) KCNA via REUTERS 

<韓国に対する最近の数々の挑発行為とあわせて、朝鮮半島の軍事的な緊張の拡大を示す動きとみられている>

最近撮影された衛星写真で、北朝鮮が韓国との間の幅4キロメートルの非武装地帯(DMZ)の境界に沿って、長さ2.9キロの細長い土地を整地していることが明らかになった。これは、朝鮮半島のさらなる緊張拡大を示すものだ。

【マップ】非武装地帯、聖地前と整地後

地球観測衛星データを提供するプラネット・ラボから本誌が入手した画像によると、ここ数週間で、新たに整地された土地が少なくとも4カ所あることがわかった。そのうちの1カ所は明らかに北朝鮮の国境のフェンスを越えて非武装地帯にまで広がっている。

 

次のページの上の画像は今年6月のもので、黄色い枠の中が整地された土地だ。ページ下の4月下旬の時点では草木に覆われていた。現在は、整地された土地が、非武装地帯内に約800メートル以上伸び、韓国の高城統一展望台近くの山の尾根の方向に続いている

北朝鮮の動きが最新の画像で明らかになる前から、北朝鮮軍が非武装地帯付近のいくつかの監視所で新たな陣地を建設しているということが、すでに報じられていた。韓国のニュースサイト、ザ・ファクトが公開した写真には、約30人の兵士が丘の上にある既存の国境警備隊に新しい砦を作っている様子が写っており、その動きは川向うの韓国坡州市炭県面から見ることができた。

だが、最新の画像からは、工事の範囲が以前の報道よりも広範囲に及んでいることがわかる。

北朝鮮軍の行動が容易に

ジョージ・ワシントン大学のイマニュエル・キム准教授は本誌に、整地の理由のひとつは、非武装地帯全体の見通しを良くするためだろうと語った。非武装地帯の大部分は森林や灌木に覆われている。この地域の植生を除去すれば、北朝鮮軍がこの地域をより効果的に監視できるようになる。

「開けた土地は、反対側の動きや活動を発見しやすくなる。軍人や車両の移動が容易になることも、大きな利点だ」と、キムは本誌に語った。「土地が整地されていれば、軍事行動や緊急事態が発生した場合、より迅速で効率的な動員が容易になる」

非武装地帯内での軍事活動は、朝鮮戦争(1950~53年)を終結させた休戦協定によって禁止されているが、両国ともに、この協定に「何度か」違反してきた、とキムは言う。

北朝鮮が国境付近で行った新たな活動の背後に潜む動機は不明だが、韓国に対してはこのところ、連続して新たな攻撃を仕掛けている。この1週間、金正恩総書記率いる北朝鮮政府はGPS妨害攻撃、ミサイル発射、ゴミや廃棄物を詰めたゴミ風船を韓国に送り込む、といった作戦を展開してきた。

タバコの吸い殻や糞尿などを詰めたゴミ風船は、ソウルをはじめ人口密度の高い韓国の北部地方全域に着陸した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀総裁、国債利回りのボラティリティー低下望む 

ワールド

ローマ教皇に両肺炎の初期症状、一段の治療必要=教皇

ワールド

中国、WTOでトランプ関税を非難 「一方的で世界貿

ワールド

中国、ウクライナ和平努力を支持 ガザは「交渉材料で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン...ロシア攻撃機「Su-25」の最期を捉えた映像をウクライナ軍が公開
  • 4
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中