「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...SNSで犯罪組織に応募
LIFE OF CRIME
手っ取り早く稼げる誘惑
アリゾナ州の国土安全保障調査部(HSI)のレイ・リード特別捜査官補は、トゥーソン都市圏の作戦を監督している。リードが国土安全保障省に入った08年当時、密入国は身内によるものだった。基本的には幼なじみや親族の知り合いを頼って集まったグループが、頭領が指揮を執る大きな密入国ビジネスに参加していた。
それが近年は、密入国を取り仕切る国際犯罪組織のスキームは協同組合のように運営され、個人が密輸サービスを提供する。
「彼らは連絡を取り合うが、必ずしも直接、会うわけではない......信頼できる知り合いや幼なじみのネットワークには頼らなくなった」と、リードは言う。「(取り締まる側にとって)難しいのは、世界中で誰でもこうした組織のメンバーになれるが、ほかのメンバーには会わないということだ。彼らは基本的に、広告に応募して、広告の掲載者とオンラインでやりとりするだけだ」
さらに犯罪組織は、ソーシャルメディアや暗号化されたアプリが「匿名であるという偽りの感覚」に付け込み、応募する人々を利用して搾取する方法を見つける。
アリゾナ州南部では、密入国者を運ぶ運転手の募集や、それより数は少ないが違法薬物の販売など、あらゆる類いの広告がソーシャルメディアにあふれているとリードは言う。「こうした広告に応募する人は、手っ取り早くカネを稼ぎたいだけだ。組織側は基本的に、自分たちの広告は法執行機関にバレないと言って指示を出す」
「応募者の身元は調べない。組織は存在を明かすというリスクはあるが、匿名性を利用して個人をリクルートできる。そして、法執行機関は自分たちのやりとりを見ることはできないと説明する」
そのようなメッセージは「誤り」だと、リードは強調する。今の時代は法執行機関が自由に使えるツールがあって、本当の意味の匿名性は存在しないのだ。これは、検問では徹底的に調べたりしない、車を警察犬で調べたりしないといった犯罪組織の昔からの傲慢な思い込みでもあると、彼は言う。
しかし、広告に応募する若者にとって危険であることに変わりはない。「あなたがフェニックスに住む20歳で、お気に入りのソーシャルメディアがあり、ポップアップする広告を見て簡単に稼げそうだと思って応募するなら──それは個人の選択だ。誰も強制しているわけではない。彼らは広告に応募して、指示を受ける。彼らが誰なのか知る由もない人々を車に乗せる。そうしたことをする人々が捕まっている」