「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...SNSで犯罪組織に応募
LIFE OF CRIME
入国者に食べ物を提供する慈善団体(今年2月、カリフォルニア州サンディエゴ) QIAN WEIZHONGーVCG/GETTY IMAGES
<ソーシャルメディアの広告を見て、軽い気持ちで犯罪組織の「求人」に応募する若者たち>
「人間の密輸」に手を染めるアメリカのティーンエージャーが今、急激に増加している。
正規の手続きを経ずにアメリカに移住しようとする人たちを非合法な形で入国させたり、既に不法入国している人たちを運んだり、かくまったりしているのだ。法執行機関の関係者の話によると、そうした若者たちの最大の動機はカネだという。
密入国は、成り済まし、文書偽造、福祉の不正受給、ギャング活動、金融詐欺、さらにはテロリズムなど、さまざまな犯罪への入り口といわれることが多い。密入国の増加をめぐっては、バイデン政権への風当たりが強まっている。
メキシコと国境を接するテキサス州は2021年3月、「ローンスター作戦」と称して強硬な密入国対策に乗りだした。今年4月の発表によると、この作戦によってこれまで3年間に身柄を拘束された密入国者数は50万3800人以上。逮捕者数も4万400人を上回る(このうち3万6100人以上が重罪)。
同州公衆安全局が本誌に示したデータによると、今年1月には密入国を手助けした疑いで数百人が逮捕された。被疑者の年齢はさまざまで、1960年代生まれの人物もいるが、2008年生まれも含まれている。
昨年11月には、同州ダラスのティーンエージャー2人が密入国関与の容疑で逮捕された。そのうちの1人ジョナサン・ロドリゲス(17)はケーブルテレビ局ニューズネーションに対し、この件で2人に提示された報酬は1300ドルだったと語っている。ロドリゲスは未成年ながら、成人扱いで訴追された。
テキサス州エルパソの地元テレビ局KTSMによると、その1カ月後には、エルパソで15歳の少年が身柄を拘束されて訴追された。5人の密入国者を車両で運んだ容疑だ。
密入国に加担する犯罪組織メンバーには10代の若者も少なくないと、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)は本誌に語っている。
「悲劇的な話だが、メキシコでもアメリカでも、多くのティーンエージャーが犯罪組織に利用されて、犯罪の実行役を担わされている」
同議員に言わせれば、バイデン政権は連邦レベルの密入国対策を実行せず、「意図的に」状況を悪化させているという。
メキシコとの国境に近いアリゾナ州南東部のコーチス郡は、昔から密入国の舞台になってきた。国境付近の町で密入国は目新しい現象ではないと、同郡のマーク・ダネルズ保安官は本誌に語る。
「この3年間とそれ以前の違いは、規模の大きさだ。今(密入国の)件数は史上最悪の水準に膨れ上がっている。しかも対策は取られていないし、対策を講じようという姿勢も見られない」