「現代のネロ帝」...モディの圧力でインドのジャーナリズムは風前の灯火に
MODI’S UNFREE MEDIA
主流メディアは政権を批判する者を、国益に反する悪者に仕立て上げる。20年に農業従事者が農業関連新法に抗議する大規模デモを行うと、複数のメディアが彼らを「分離主義者」扱いした。
主流メディアの真実隠蔽を補完するのが、批判的なジャーナリストへの締め付けだ。非合法活動防止法(UAPA)のような強権的反テロ法の影響もあり、14~23年の間に36人のジャーナリストが逮捕された。ニュースクリックのような独立系メディアの家宅捜索も行われている。
特にカシミールの状況は深刻で、多くのジャーナリストが警察から無差別に呼び出され、尋問されている。昨年は複数のカシミール人ジャーナリストのパスポートが停止された。
インドで働く外国人ジャーナリストも、敵対的な環境にさらされていると訴える。オーストラリアABCのアバニ・ディアスは最近、自分の報道が「一線を越えた」と政府から言われ、突然インドを去らなければならなかったと語った。
英BBCが02年のグジャラート暴動におけるモディの役割について辛辣なドキュメンタリーを制作すると、当局はBBCのインド支局を家宅捜索した。
モディ政権は多くの政府監視機関を実質的に乗っ取り、誰にでも恣意的に罰則を科せる法律を導入した。21年にはIT(仲介者ガイドライン・デジタルメディア倫理規定)規則が制定され、政府に強力なデジタルメディア管理権限が与えられた。
私が所属するキャラバン誌は同年、閣僚グループの会合や「有力者」との協議を基に作成された政府報告書の記事を掲載した。この報告書には、独立系ジャーナリズムらしい報道がまだ残っているデジタルメディアをコントロールするため、会議で検討された提言のリストが含まれていた。
協議の中で、ムクタル・アッバス・ナクビ少数民族問題担当相(当時)は「事実に基づかず政府に不利な記事を書いたり、フェイクニュースを流したりする連中を無力化したい」と発言。
この協議から生まれた「行動指針」の1つは、迅速な対応ができるように「政府の信用を落とすネガティブなインフルエンサー」を常に監視するというものだった。
政府の「フェイクニュース」の定義は、本来の語義とは正反対に見える。報告書からは、信頼性の高いオルトニュースなどのニュースサイトを抑え込み、ジャーナリズムを装った政府寄りの宗教団体系プロパガンダサイトのオプインディアを後押ししたい意向が感じられる。
政府の報道情報局も19年にファクトチェック部門を設立した。表向きの目的は政府の政策に関するフェイクニュースの規制だが、実際には政府に批判的な報道を根拠も示さずに否定するケースが目立つ。