バイデン政権の方針と防空能力不足でハルキウは第2のマリウポリに?
Russia on the Offensive
ウクライナ政府関係者は、ロシアは2年前のようなハルキウの占領ではなく、空爆で街を徹底的に破壊しようとしていると懸念する。ワシントンのシンクタンクである戦争研究所(ISW)も、ロシア軍はウクライナ領内に深く攻め込むよりも、国境に緩衝地帯をつくることに重点を置いているようだと分析する。
とはいえ、ロシア軍はハルキウのすぐ隣のボウチャンスクやブグルワトカなどに、ライフル大隊や戦車隊を送り込んでいる。このためゼレンスキーは15日、対話アプリ「テレグラム」に投稿した動画で、F16戦闘機の供給拡大を欧米諸国に訴えた。
ロシア軍は戦術的な適応も遂げている。ウクライナ軍は2年前、アメリカが供給した高機動ロケット砲システム(HIMARS)など多連装ロケットシステムを駆使して、ロシア軍をウクライナ領から押し戻すことに成功した。当時のロシア軍には、欧米の兵器に対する戦術的な備えもなかった。
だが今、ハルキウ攻撃の拠点はロシア領内にある。このためウクライナ軍は、米陸軍戦術ミサイルシステムやイギリスの「ストームシャドー」とそのフランス版であるSCALP-EGといった射程の長い巡航ミサイルを(大量ではないが)保有しているのに、使うことができない。
武器の不足も深刻だ。ウスチノワによると、ウクライナ軍では10個大隊が新たに編成され、戦闘態勢は整っているのに武器がない。
ウクライナの議員らは、防空能力が圧倒的に不足しているため、都市はもちろん最前線の部隊も援護できないと嘆く。アメリカの対空防衛システム「パトリオット」が計4基(ドイツから3基、オランダから1基)追加供給される予定だが、米政府はそれ以上の提供を予定していない。
「このままではハルキウはマリウポリになってしまう」と、ウスチノワは語る。ウクライナでも有数の工業都市だったマリウポリは、ロシア軍により徹底的に破壊され、ロシアへの併合を宣言された。
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