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自信に満ち、自己主張する「強気な国」となったインド...国民が熱狂する「強いインド」を支える外相の手腕

MODI’S MESSENGER

2024年5月15日(水)17時14分
リシ・アイエンガー(フォーリン・ポリシー誌記者)

国民は「強いインド」を支持

昨年9月にインドでG20サミットが開催されたとき、モディはインドの正式名称としてバーラトを使用して世界を驚かせた。批判派は、インドをヒンドゥー至上主義の国にしようとする試みの1つだと糾弾した。

だが、モディのナショナリスト的な政策は、けっして国民に不人気ではない。14年の総選挙でBJPは下院543議席のうち282議席を獲得し、インドの政党としては30年ぶりとなる単独過半数を獲得した。世論調査を見る限り、今回も14年と同レベルの議席を獲得できそうだ。

人口で世界第1位、経済規模でも第5位の大国となったインドの政策は、世界にも大きな影響を与える。モディ政権下で、インドは欧米諸国やペルシャ湾岸諸国、そしてグローバルサウスとの関係を強化してきた。また、クアッド(日米豪印戦略対話)、I2U2(インド、イスラエル、アラブ首長国連邦、アメリカの新クアッド)、G20といった多国間協力にも力を入れている。

一方、現代世界の2大紛争では、インドはどの陣営にも肩入れしすぎないよう注意している。ウクライナ戦争ではロシアと欧米諸国の両方に配慮し、イスラエル・ハマス戦争ではパレスチナ自治区ガザにおける人権尊重と2国家解決策を擁護しつつ、イスラエルにインド製ドローン(無人機)を供給したといわれる。

2月下旬、ジャイシャンカルは母校JNUでの講演で、「バーラトとは政体だけでなく、文明国家であることを意味し、(世界の舞台で)より大きな責任を担い、貢献しなければならないことを意味する」と熱弁を振るった。そのためには「国際的なアジェンダに影響を与え、世界の言論を(インドに有利に)形成しなくてはならない」

インドの「戦虎外交」はまだまだ続きそうだ。

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