最新記事
動物

口から血を流し、迫真の演技で「死んだふり」をするヘビ...実際に「生き残り」効果高まるとの研究結果が

Snakes Fake Dying Using 'Dripping Mouthfuls' of Blood

2024年5月11日(土)20時02分
ジェス・トムソン
「死んだふり」をするヘビ

BigBoom/Shutterstock

<欧州とアジアに生息するダイススネークの一部は、通常の「擬死行動」よりさらに巧妙な「技」を使うことで効果を高めている>

ヘビの仲間には、捕食者に食べられるのを避けるため「死んだふり」をするものがいる。そうした中には、まさに「迫真」と言えるような巧妙な演技で相手を騙すヘビもいるのだが、このたび発表された論文では、口から血を流して死体そっくりに擬態するグロテスクな手口を使う種が紹介された。

■【写真】まさに迫真の表情! 舌を突き出し、口から血を流して「死んだふり」するダイススネーク

ダイススネークは、じっとしていることで死んだように見せかけるだけでなく、自身のふんを体に塗りつけたり、口から血を流したり、悪臭を放ったりする「技」まで駆使する。学術誌バイオロジー・レターズに掲載された新たな論文によれば、こうした手法を取るヘビは、体液を出さない種に比べて「死んだふり」をする時間が短くてすむという。

死んだふりは「擬死行動」とも呼ばれ、捕食者に食べられるのを避けるために様々な動物が用いる戦術だ。捕食者は生きている獲物を好むことが多く、すでに死んでいると思えば獲物を食べる可能性は低くなる。

捕食者が、追跡のスリルや狩猟本能を引き起こす動きに頼っている場合はなおさら効果は高い。また、死んだふりをすることで、捕食者が一瞬気を取られたり、「死体」を食べずに通り過ぎようとしたりすれば、逃げるチャンスができる。

舌を突き出して(死んだふりの)誇示行動をする

論文によると、欧州とアジアの一部に生息し、毒を持たないダイススネークは、死んだふりをする際、じっとしているだけのものもいれば、口から血をしみ出させたり、自分のふんを体に塗りつけたりもする。研究者がダイススネーク263匹を観察したところ、124匹がふんを塗りつけ、28匹が口から血を出した。

「捕獲されると、ヘビは激しくもがき、音を発しながら、悪臭を放ったりふんを体に塗りたくったりする。最終的には口を開けて舌を突き出して(死んだふりの)誇示行動をし、動かなくなる」と研究者らは述べる。また、死んだふりの際の反射出血として、「小さな血だまりができるか、(血が)口から滴り落ちる様子が観察された」という。

「(死んだふりの)直前や最中の様々な行動を観察したところ、そのいくつかが相乗的に働き、(死んだふりの)誇示行動全体を、捕食者をより思いとどまらせるものにすることで、捕食動物が学習した病気の獲物や死んだ獲物に対する嫌悪感を利用していると考えることができる」と研究者らは指摘する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中