最新記事
ウクライナ戦争

やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

As Ukraine Gets F-16s, Russian Forces Plead For Shotguns

2024年5月12日(日)07時00分
ジーザス・メサ

「ショットガンが必要なんだ!」

カメラに向かって、こう語り掛けるロシア兵士の動画が話題になっている。歩兵用の標準的な武器でドローンに立ち向かうことの難しさを語り、「散弾銃が必要だ。散弾銃が必要なんだ!」と訴える内容だ。「ドローンは、われわれにとって現実的な問題であり、効果的な撃墜方法を見つけるのに苦労している」

ほかのロシア兵士もソーシャルメディアで、連日のドローン攻撃に対抗するため、前線に散弾銃を送ってほしいと母国に懇願している。ある兵士はこう語る。「ドローンは、ひっきりなしにやって来る厄介な存在で、われわれには打つ手がなくなろうとしている。散弾銃は、地上戦の流れを変えてくれるはずだ」

散弾銃は簡単かつ安価、手軽なドローン対抗策

ドローンという現代的な兵器に比べ、散弾銃はローテクな兵器だが、ドローンに対する効果的な対抗手段であることは間違いない。散弾銃を使えば、低空飛行する鳥くらいの大きさのドローンの方向をおおまかに狙うだけで破壊することができる。

世界の紛争について報じる独立系メディア「ポピュラー・フロント」は最近、「ロシアは、より高度な防空システムの配備が遅れている一方で、ドローン問題への安価で手軽な対応策として散弾銃を採用している」と指摘している。

ウクライナも、ロシア軍ドローンに対する防衛手段として散弾銃を採用しているが、ロシアはドローンの供給量がはるかに少ないため、その頻度は低い。

そして、アメリカも同じようなことを考えている。米海兵隊は、対ドローン作戦における散弾銃の可能性を認めている。海兵隊第2低高度防空大隊は4月の訓練で、散弾銃で小型無人航空機システム(sUAS)と交戦する演習を行なった。

米連邦航空局(FAA)はsUASについて、重量約25キロ以下のドローンと定義している。ある海兵隊員はこう説明している。「とりわけ、従来の防空システムが有効でない都市環境では、散弾銃はドローンに対抗するための多用途で効果的なツールだ」

ロシア軍が散弾銃に頼ろうとしていることは、ソビエト連邦時代の兵器庫を持つロシアが、現代戦の進化する要求に対応するうえで直面している課題を浮き彫りにしている。しかしウクライナも、西側同盟国からの数十億ドル規模の援助を効果的な戦略に変えるうえで、独自の問題を抱えている。

F-16をウクライナに送ることを支持している軍事専門家でさえ、ウクライナが最新戦闘機部隊を統率・維持する能力については疑問を呈する。米空軍のクリステン・D・トンプソン大佐は3月に、次のように書いている。

「F-16は非常に高性能な戦闘機だが、効果的に運用するには、高度な訓練と支援が必要だ。ウクライナがこの戦闘機の能力を十分に引き出すには、兵站と技術の面で大きなハードルを乗り越える必要がある」

これらの問題が解決されれば、ウクライナに到来するF-16は、制空権の確保に不可欠な優位性をもたらす可能性がある。特にロシアが、ウクライナによる連日のドローン攻撃に対抗するため、前線の兵士に散弾銃を行き渡らせることにさえ苦労しているなかでは、その意味は大きい。
(翻訳:ガリレオ)

20250311issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月11日号(3月4日発売)は「進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗」特集。ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニスト、29歳の「軌跡」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き

ビジネス

トランプ氏、ビットコイン戦略備蓄へ大統領令に署名

ビジネス

米ウォルマート、中国サプライヤーに値下げ要求 米関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中