南シナ海、米比合同演習の周囲を埋め尽くす中国船が見えた
Chinese Vessels Detected Massing Near US-Led Military Exercise
米比合同演習に先駆け、東シナ海では日米韓の共同訓練が行われた(4月11日) ABACA via Reuters Connect
<海軍力を見せつけるためか、海警局や「海上民兵」の艦船が何十隻も繰り出している>
南シナ海の係争海域に今、中国船がどっと集結している。アメリカと同盟国のフィリピンが実施している年次合同演習の一環である洋上訓練をにらんでの動きとみられ、中国海警局の艦船に加え、武装した中国漁船など「海上民兵」の船舶も続々とこの海域に押し寄せている。
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南沙(スプラトリー)諸島の「セカンド・トーマス礁/ミスチーフ礁周辺に今日は恐ろしく多くの船がひしめいている」──4月23日にX(旧ツイッター)にそう投稿したのは、米スタンフォード大学のプロジェクト「シーライト」を率いるレイ・パウエルだ。シーライトは中国海軍のグレーゾーン活動(領海侵犯など平時と戦時の中間に位置する準軍事活動)を監視・分析するプロジェクト。リアルタイムの船舶追跡データに基いてパウエルが作成・投稿したマップは、南シナ海の環礁や岩礁の周りが中国船でほぼ埋め尽くされていることを示している。
Extremely busy around 2nd Thomas Shoal/Mischief Reef today, with at least 2 #China Coast Guard & 29 large Qiong Sansha Yu militia ships detected on AIS on the eve of the Balikatan exercise. pic.twitter.com/Ebeeah8UO1
— Ray Powell (@GordianKnotRay) April 23, 2024
セカンド・トーマス礁とミスチーフ礁はいずれも国際的に承認されたフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置している。南シナ海のほぼ全域を自国の領海と主張する中国は、ミスチーフ礁を埋め立てて軍事基地を建設。ここを拠点に、近くのセカンド・トーマス礁に物資を輸送するフィリピン船の航行をたびたび妨害している。
スカボロー礁周辺にも集結
「バリカタン」(タガログ語で「肩を並べて」という意味)と名付けられた恒例の米比合同演習は今年、南沙諸島に近いフィリピン・パラワン州の島を中心に洋上訓練が行われている。
南沙諸島の環礁周辺に集結した中国船は現在、中国の船舶自動識別システムで明らかに特定できる状態になっている。自国の海軍力を誇示しようとする中国政府の意図がそこに透けて見えると、パウエルは本誌に語った。
パウエルによると、南シナ海では中国海警局と海上民兵の船舶が「ここ1カ月非常に増えていた」が、先週は船舶の交代時期に当たったため、その数がさらに急増。だが、その後も通常レベルに戻る様子はないという。
「これは米比の合同演習に対抗するための誇示行動と思われる」と、パウエルは言う。「もっとも中国は近年フィリピンが進めている水路測量プロジェクトにも警戒を募らせている上、フィリピンが実効支配するセカンド・トーマス礁への物資輸送にも引き続き神経を尖らせている」
本誌はフィリピン軍と中国外務省にメールでコメントを求めている
4月23日には、シーライトのデータで、セカンド・トーマス礁の北東に位置する、やはり領有権でもめているスカボロー礁周辺にも中国船が集結していることが確認された。スカボロー礁もフィリピンのEEZ内にあるが、中国は2012年にこの環礁を奪い、今年2月には中国の小型船がフィリピン漁船を締め出すために障壁を設置する様子が確認されている。