「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家の「早すぎる死」から政府は何を学べるか
TORIYAMA AND SOFT POWER
人材確保の環境づくりを急げ
ソフトパワーの経済への影響はより明らかだ。アメコミ出版社ダーク・ホース・コミックスの場合、刊行物のわずか1%にすぎない日本の漫画が売り上げの60%以上を占める。
ほかにもスタジオジブリの映画や任天堂のポケモンシリーズなど、日本のポップカルチャーは世界中でカルト的な人気を誇ると同時に主流派にも好評だ。
伝説的ゲームデザイナー宮本茂がキャラクターデザインを手がけた人気ゲームの映画版『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、全世界興行収入13億ドルを突破。続編も2026年に公開予定だ。
こうした桁外れの数字がソフトパワーの売り込みに各国政府を過剰介入させてきたのだろう。だが皮肉にも介入は有害無益になりがちだ。韓国文化の輸出、いわゆる「韓流」に躍起の韓国政府は過度な規制でKポップの成功に水を差し、孔子学院をプロパガンダに利用する中国政府のやり方は学問の自由や資金提供の不透明さなどで猛反発を買っている。
日本政府は21年の東京五輪の開会式で墓穴を掘った。スキャンダルが相次いだ末に演出は盛り込みすぎ、大人気の曲やアーティストやキャラクターが登場せず盛り上がりに欠ける内容......。その一方で、寿司や和牛など和食文化の海外での紹介・消費の方法に口出ししようとしている。
政府はむしろ国内でアートの振興を妨げている問題に目を向けるべきだ。鳥山の早すぎる死はクリエーティブ産業の構造的な問題に改めて光を当てている。
働きすぎ、ひと握りの天才への依存、低賃金、人手不足といった問題を解決するには、優秀な人材を確保できるよう政府が働き方改革や新たな移民政策によって支援する必要がある。
鳥山の死は何百万ものファンの心に大きな穴をあけた。だが彼の永遠に色あせない作品と『ドラゴンボールZ』に触発された次世代のクリエーターたちが生み出す新たなアートが、その穴を埋めるに違いない。
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