LGBTQは受け入れても保守派は排除...「リベラル教皇」で割れるカトリック教会 「文化戦争」の最前線でいま何が?
POPE’S DIVINE INTERVENTION
これには世界中から反対の声が上がった。約90人の聖職者、学者、識者らが連名で全世界の枢機卿・司教に書簡を送り、教皇庁の見解に反対するよう求めた。とりわけアフリカ(世界で最も急速に信者数が増えている地域だ)からの反発は強かった。その急先鋒は、コンゴ民主共和国の枢機卿フリドリン・アンボンゴ。同性愛の容認は「私たちの信仰に混乱を来し、アフリカ社会の精神性とも相いれない」と反論した。
しかし教皇フランシスコは動じない。「人々を搾取するような起業家」に平気で祝福を授ける一方、たとえ同性同士でも「愛し合う2人」への祝福を拒むというのは「偽善」だと、真っ向から言い返している。
保守派をバチカンから追放
カトリック教会を二分する文化戦争の最前線を見たければニューヨーク市に行ってみるといい。そこでは距離にしてほんの3キロほど離れた2つの教区で、この教皇について正反対の評価を聞くことができる。
まずは同市アッパー・イーストサイドの聖イグナチオ・ロヨラ教会にいる神父マーク・ハリナン。教皇フランシスコが教会に「もっと慈悲と共感に力を入れる」よう説いていることに深く共感する彼は、自分の教区にも教皇の同性カップル容認に「たいへん感謝している」信者が少なからずいると語る。もちろん「変化のペースが遅いことに不満な」人もいるが、神父としては「教皇とて自分の思いどおりに動けるわけではない」と理解している。
同じニューヨーク市マンハッタン区でもミッドタウンにある聖家族教会の雰囲気は違う。そこの神父ジェラルド・マレーは、フランシスコを「サプライズの教皇」と呼んではばからない。しかも「必ずしも歓迎できるサプライズとは限らない」。
マレーに言わせると、教皇フランシスコはアメリカの一部カトリック教会の主張を「イデオロギー的」と切り捨てるだけで、「(保守派からの)批判の中身を検討する」ことさえ拒んでいる。
アメリカの保守的な司教らに対して、教皇フランシスコは昨年の夏に明確なメッセージを出した。アメリカのカトリック教会にいる一部保守派は「後ろ向き」だと批判し、彼らの「極めて強力かつ組織化された反動的姿勢」は政治的イデオロギーであって信仰心ではないと断じた。そして、行動に出た。