最新記事
宗教

LGBTQは受け入れても保守派は排除...「リベラル教皇」で割れるカトリック教会 「文化戦争」の最前線でいま何が?

POPE’S DIVINE INTERVENTION

2024年4月24日(水)16時31分
キャサリン・ファン(国際政治担当)

まずは冒頭のストリックランド司教の解任。その数週間後にはアメリカ出身の枢機卿レイモンド・バークをバチカン市国所有のマンションから追い出し、給与の支払いも停止した。前代未聞の処分である。

枢機卿の地位はカトリック教会の組織で教皇に次ぐもので、80歳になるまでは教皇を選ぶ「コンクラーベ」に参加する権利を有する。そんな最高位聖職者の中で、反フランシスコ派の旗手とされるのがバークだった。まだ75歳だが、今回の処分を事実上の引退勧告とみる向きもある。

急進的リベラルからの批判も

ストリックランド司教の解任について、教会は詳細な理由を公表していない。それでも彼自身は、要するに「教皇による改革を支持しなかった」からだろうと考えている。ちなみに彼は、解任される1カ月ほど前にフランシスコの教会改革を「茶番」と一蹴していた。本誌とのインタビューでも、「聖書に記された真理を守るべき者が、どうして『信仰は(時代によって)変わる』などと言えるのか。そんなこと、聖書には書いてない」と語っている。

イデオロギー的対立を招く問題に踏み込むのは、フランシスコにとって「危ない綱渡り」だと指摘する向きもある。変化を掲げる一方で、枢機卿や司教たちからは教皇の正統性に疑問を抱かれないようにする必要があるからだ。

一国の大統領が閣僚を自分の方針に従わせようとするのと同様、ローマ教皇も枢機卿たちに、教皇庁の方針を世界中の信者たちに伝える役割を期待している。しかしアメリカのカトリック系新聞ナショナル・カトリック・リポーターのバチカン駐在員クリストファー・ホワイトが言うように、バーク枢機卿は何度もフランシスコの教えに異議を唱えてきた。だから「もはや家賃の補助は無用」と判断されたらしい。

教皇フランシスコの進める改革にはリベラル派からの批判もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中