不倫口止め料巡るトランプ裁判が開始、有罪でも無罪でも「民主主義の勝利」と言い切れる理由
Important After All
トランプは、自分はほかの人と同じ規則に従う必要はないと信じている。16年の大統領選でヒラリー・クリントンをはじめとするほかの候補者は、献金の上限額や情報公開義務などに関する法律に従ったが、トランプはためらうことなく法律を無視した。
ブラッグによる起訴は、民主主義国家で公職に就こうとする者は誰であれ、法的義務を無視することは許されないという単純な命題を示している。大統領経験者だろうと大富豪だろうと、薄っぺらな法的解釈を盾にして責任を回避し続けることはできない。
マーチャンは、今回の裁判でこの基本原則が問われていることを理解しているようだ。これが、この裁判が極めて重要な意味を持つもう1つの、そして最後の理由につながる。ニューヨークの裁判所は、連邦裁判所より政治的介入の影響を受けにくいのだ。
トランプをいま裁くべき
トランプは4件の刑事裁判を抱えている。ホワイトハウスから機密情報を持ち出した件に関する裁判は、彼が在任中に指名したアイリーン・キャノン判事が担当となった。彼女は裁判開始を遅らせようとするトランプの画策を、何度も許してきた。
連邦議会議事堂襲撃をめぐる裁判を担当するターナ・チャトカン判事は予定どおり裁判を進めようとしたが、連邦最高裁による不当な介入によって予定を狂わされた。トランプが20年大統領選でジョージア州の投票結果を覆そうとした件の裁判はあまりに複雑で、捜査を指揮する女性地区検事が自ら任命した男性特別検察官と恋愛関係にあったという疑惑が浮上する前から、年内の裁判実現は困難だった。
残るのは党派主義に基づく圧力も引き延ばし戦術もはねつけ、迅速な裁判の原則を維持してきたニューヨーク州の裁判だ。昨年まで私は連邦裁判のほうが公平な審理を行うと考えていたが、それは間違いだった。キャノンらが牛耳る連邦裁判が、ニューヨーク州よりまっとうなはずはない。
ニューヨーク州でトランプに有罪評決が下る保証はない。私たちはいつもどおり、陪審員らが恐れや偏見なしに判断を下すことを信じるべきだ。
評決は有罪かもしれないし、無罪かもしれない。評決不能や審理無効になる可能性もある。だが現時点で最も重要なのは、トランプがこのタイミングで裁判を受けることだ。
大統領選が迫るなか、選挙に不正介入する新たなチャンスが生まれている。ブラッグとマーチャンのおかげで、トランプは新たな罪を犯すチャンスを得る前に、過去の少なくとも1つの犯罪容疑について責任を問われる。それ自体が大きな勝利だ。
2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む
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