不倫口止め料巡るトランプ裁判が開始、有罪でも無罪でも「民主主義の勝利」と言い切れる理由
Important After All
第1にブラッグは、トランプとコーエンが選挙の候補者(トランプ)の指示で行った支払いが違法な選挙献金に当たり、連邦選挙運動法に違反すると主張する。
コーエンは既に連邦裁判所で、この行為について有罪を認めている。そのため、この点でトランプを起訴しても、無理な拡大解釈とは言えない。
第2にブラッグは、ニューヨーク州の選挙法違反を突いた。州法は「違法な手段により、選挙で公職に就くことを促進または阻止する」共謀行為を禁じている。ブラッグは、トランプが大統領選で確実に勝つために不正行為を働いたことで、同法に違反する意図があったと主張した。
これらの主張は、とりたてて独創的なものではない。連邦と州の選挙法を適用し、そこへニューヨーク州の業務記録法の違反を絡ませており、とても明快だ。
トランプが反論として唱えることができた、幾分もっともらしい主張は1つだけだった。それは連邦選挙運動法が、選挙関連の記録改ざんを罰するニューヨーク州法より優先されるというもの。つまり責任を問われるのは、軽犯罪となる業務記録の改ざんだけだというものだった。
この主張は2人の判事が退けた。ニューヨーク州の裁判を統括する同州最高裁のフアン・マーチャン裁判官と、この裁判を連邦裁判所に移そうというトランプの訴えを直ちに却下したアルビン・ヘラースタインだ。この事実は、ブラッグの起訴内容が有力であることと、ブラッグら検察側の手腕が優れていることを示している。
そしてNY州が残った
トランプの異議申し立てに対するブラッグの反論は鮮やかだった。マーチャンはブラッグの論拠をほぼ採用。有罪の主張を切り崩そうとするトランプの試みに大打撃を与え、その軽薄な主張を一蹴した。
公判前日には、検察側が確たる法的根拠に立脚していることが明らかになった。事実認定の前に裁判を終わらせようというトランプ側のもくろみは、ほとんど無に帰した。
これら全てが、ブラッグによる起訴を疑問視することが誤りだった第2の理由につながる。私はトランプが大統領選前に直面する裁判は、20年の大統領選に関するものであるべきだと考えていたのだが、今回の裁判は16年の大統領選に関するものだ。その違いは重要ではあるものの、起訴の妥当性や合理性を損なうことはない。
選挙結果を覆そうという試みを含め、トランプが20年の大統領選に関して行ったことは、不倫の口止め料の支払いよりもはるかに深刻な犯罪だ。そこに議論の余地はない。
理想的には、最初に20年の選挙をめぐる行動に関するトランプの責任を裁判で追及できればよかった。一連の行為は民主主義に対するかつてない攻撃であり、衝撃的な暴力行為を招いたからだ。だがトランプが執拗に時間稼ぎをした(そして連邦最高裁が何度も彼を甘やかした)ことで、大統領選前にその裁判が実現する可能性はほぼなくなった。
そして残ったのが、このニューヨーク州の裁判だ。共和党は本件について、過去の不倫と何件かの不正会計をめぐるもので選挙とは関係ないと一蹴しようとしている。だが、これは紛れもなく選挙に関する裁判だ。もっといえば、規則に従うべきなのは誰で、破ってもいいのは誰かという問題についての裁判だ。
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