今こそ考える「国家の役割」とは何か? 政府が危機対応へ機能しなければ悲惨な結果を招く
REGAINING CONTROL
国民国家が提供できるのは、健康で雇用されている人々が、そうでない人々に保険という形で手を差し伸べるシステムだ。
政府がその役割を果たして、貧困層も利用できるよう補助金を出したり、加入者を十分確保するために加入を義務付けたり、若者から保険料を徴収して高齢者の消費を増やしたりする場合、私たちはそれを社会保険、あるいは福祉国家と呼ぶ。
今回のパンデミックは、懐疑論者に現代の福祉国家の利点を確信させるべきものだった。パンデミックは多くの人が病気になり、職を失うというまれな状況だ。国民全体の保険は崩壊し、政府が最後の砦(とりで)となる。
自国の運命をコントロールするには、各国は自らの衝動をコントロールできるようにならなければならない。
しかし、今日の「常識」はそれとは矛盾している。財政的な自己規律は紙幣をどんどん刷りたい左派の一部にとって20世紀の遺物であり、右派の多くにとっては全て選挙で邪魔になる。市民が不安になるのも無理はない。
アンドレス・ベラスコ
ANDRES VELASCO
経済学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス公共政策大学院学部長。コロンビア大、ハーバード大教授を歴任。2013年にはチリ大統領選に立候補している。
2024年12月10日号(12月3日発売)は「サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦」特集。地域から地球を救う11のチャレンジとJO1のメンバーが語る「環境のためにできること」
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら