最新記事
絶滅種の復活

絶滅した氷河時代の巨大動物「マンモス」が2028年に地上に復活する【ゲノム編集最前線】

Bringing Back the Mammoth

2024年4月5日(金)18時55分
ベン・ラム(コロッサル・バイオサイエンシーズCEO・共同創業者)、エリオナ・ハイソリ(同社生物科学部門責任者)
絶滅した氷河時代の巨大動物「マンモス」が2028年に地上に復活する【ゲノム技術最前線】

ケナガマンモスの復活を目指すコロッサル・バイオサイエンシーズのエリオナ・ハイソリ COLOSSAL BIOSCIENCES

<バイオベンチャーのケナガマンモス復活プロジェクトで、第1号のマンモスの赤ちゃんが28年に誕生する予定だ。成功したら次はドードーとタスマニアタイガーも>

「ケナガマンモス」と聞いて、どんなイメージを抱くだろう。

絶滅した氷河時代の巨大なアイコン的動物。みんな大好きな、おなじみの動物だ。子供たちには大人気。映画やドキュメンタリー、教科書などで見たことがあるだろう。

それでいて神話に登場する動物のようでもある。恐竜と同類に扱われることも。生息年代は6500万年も離れているのに......。

人間がピラミッドを建てていた時代に生息していたなんて信じられないかもしれない。そう言うと、たいがい「ウソでしょう!」という反応が返ってくる。

バイオベンチャーのコロッサル・バイオサイエンシーズを共に立ち上げた創業者で遺伝学者のジョージ・チャーチは、いま使える先端技術を駆使してマンモスをよみがえらそうとしている。私たちは彼の先駆的なビジョンに大いに触発された。

ケナガマンモスのゲノム(全遺伝情報)の解析データがどっと出始めたのは10年ほど前のこと。チャーチはこうした研究成果を活用して絶滅種を復活させ、生態系を再生して人間活動が自然に及ぼしたダメージを減らそうとわれわれと起業したのだ。

今から2050年までに、人為的な活動により生物多様性が最大50%失われる危険性があるといわれている。

私たちは絶滅種をよみがえらせて元の生息地に戻す技術を確立することで、生物多様性の保全だけでなく、ヒトの長寿や医療の研究の進歩にも貢献したいと考えている。

赤ちゃん誕生は4年後

このプロジェクトを「可能だろうか」から「やるべきなのか」に変えたのはゲノム編集・合成技術の登場だ。科学はDNAを「読む」だけでなく、「書く」段階に突入した。

加速度的に進展するAI(人工知能)のソフトウエア開発と機械学習の多様なモデルの登場も私たちのプロジェクトを後押しする。

現在私たちは、ゲノムの多くの部分を同時並行的に編集する「多重ゲノム編集」を行っている。それによりDNAの非常に大きなブロックを同時に操作できるようになった。

コロッサルでは今、優秀な科学者たちが化石から抽出したDNAを解析し、ゲノムの編集・設計技術を活用して、ケナガマンモスをアイコン的存在にした表現型(観察できる特徴)を再現しようと日夜奮闘している。

マンモスは陸上動物では母胎内で発育する期間が最も長いため、ゲノム編集でマンモスをマンモスたらしめる表現型を確実に形づくる遺伝子を作製する必要がある。

目的は、できるだけ早くマンモスの赤ちゃんを誕生させること。この試みにはまだ誰も挑んだことがない。私たちの計画では、第1号の赤ちゃんは28年に誕生する予定だ。

私たちにとって、それは最初の一歩にすぎない。その後も数々の課題が待ち受けている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国大統領が戒厳令、国会は「無効」と判断 軍も介入

ビジネス

米求人件数、10月は予想上回る増加 解雇は減少

ワールド

シリア北東部で新たな戦線、米支援クルド勢力と政府軍

ワールド

バイデン氏、アンゴラ大統領と会談 アフリカへの長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計画──ロシア情報機関
  • 4
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 5
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 6
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 7
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    「92種類のミネラル含む」シーモス TikTokで健康効…
  • 10
    赤字は3億ドルに...サンフランシスコから名物「ケー…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中