6月の欧州議会選挙へ、ヨーロッパで「排外的な愛国主義」が流行する移民と経済以外の理由
WHY IS EUROPE MOVING RIGHTWARD?
しかし、そこにロシアによるウクライナ侵攻が起きた。中東でも戦争が始まり、アメリカではドナルド・トランプが大統領に復帰しかねない気配だ。流れが変わった。人々はその変化を察知し、この30年間とは異なる道を指し示す指導者を求め始めた。
ロシアがウクライナに攻め込むのを見て、自分たちの主権が完全なものではないと気付いた。気候変動対策を主導しようにも、今の欧州には必要な技術力がない。
今のところ、メローニは穏健なふりをしている。だが実際は、ひそかに既存の体制を崩そうとしているのではないか。現に政府の要職に続々と自分の支持者を送り込んでいる。
大統領と議会の権限を弱め、首相に権力を集中する憲法改正案も用意した。まずは国内を掌握し、次にEUを内部から変えていくつもりだろう。
だが欧州で広がる右傾化の核心に地政学上の不安がある以上、それに対抗するために必要なのは政治統合のさらなる深化だ。現状維持のままでは安全と主権を守れない。排外主義ではなく、統合推進こそが正しい道だ。
フェデリコ・フビーニ
FEDERICO FUBINI
1966年フィレンツェ生まれ。イタリアの有力紙、コリエレ・デラ・セラ寄稿者。専門分野は経済と国際関係。著書にグローバル化の脆弱性を検討した『火山の上で』(未邦訳)など。

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