国家安全条例の可決で「香港の中国化計画」が大詰めに
THE SCREW TIGHTENS
香港が中国どの都市よりも影響力のある、有害で危険な存在に
しかし、これは鄧小平以来の共産党にとって想定内。後悔などあるはずはない。それに香港の体制改造は共産党に大きなメリットがある。香港でより強力な政治マシンをつくり、残された都市としてのブランド価値を最大限に利用して、西側を標的にした諜報活動を助けることができるのだ。
華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)やTikTokだけでなく、今や「中国」ブランドそのものが有害で、西側にいるその手先は監視されている。だから共産党は他国に潜入するために、これまで以上に香港を利用するだろう。
欧米には中国よりも香港のパスポートのほうが入国しやすい。北米やヨーロッパでSTEM(科学・技術・工学・数学)を学ぶ香港人学生には、中国人学生に課されるような厳しい制約はない。共産党は、香港人に成り済まして欧米諸国に入り込む工作員のための書類を香港政府に偽造させることができる。
香港への資本の出入りはまだ自由だから、政治家や企業トップを買収する賄賂を世界中にばらまくこともできる。世界の人々は軽々しく香港が「死んだ」と過小評価すべきではない。むしろ中国共産党の支配の下、中国国内のどの都市よりも影響力のある、有害で危険な存在になると覚悟したほうがいい。

アマゾンに飛びます
2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら