最新記事
自衛隊

日本の自衛隊、西太平洋への進出を窺う中ロ艦船の監視と情報収集に活躍

2024年3月27日(水)16時20分
ジョン・フェン

中ロ海軍初の合同演習で、山東省青島の海を航行するロシアのミサイル巡洋艦ヴァリャーグ(2012年4月25日)

<中国軍やロシア軍は、太平洋の広大な海域を利用する際に、日本の領海を横断しなければならないことが多い。日本列島は中国が軍事戦略上対米防衛線とみなす第一列島線の起点でもあり、自衛隊の存在感が増している>

日本が3月25日に発表した新情報で、日本海におけるロシアと中国の軍艦の最近の動きが明らかになった。

防衛省統合幕僚監部によれば、3月23日から25日にかけて西太平洋地域を出入りした少なくとも4隻の艦船について、自衛隊の艦船と航空機が緊急出動し、監視と情報収集を行った。

<画像>3月23日〜25日に日本列島を横切った中ロ艦船

日本はアメリカの同盟国であり、同様にアメリカの同盟国である韓国と海洋上の国境を接しているが、ロシア、中国、北朝鮮という仮想敵国とも隣接している。日本海は、ロシアの太平洋艦隊の本拠地であり、北朝鮮のミサイル実験場ともなっている。

中国軍やロシア軍は、太平洋の広大な海域を利用する際に、日本の領海を横断しなければならないことが多い。日本列島は中国が軍事戦略上対米防衛線とみなす第一列島線の起点でもある。

統合幕僚監部の発表によれば、3月23日に中国海軍のルーヤンⅡ型ミサイル駆逐艦(052C)とジャンカイⅡ型フリゲート艦(054A)が、横当島(鹿児島県)の南西約90キロの海域で目撃され、その後、横手島と奄美大島の間の海域を北東に進み、太平洋に向けて航行した。

中国人民解放軍東部戦区の東海艦隊に所属するこの2隻の艦船に対し、海上自衛隊は、P-1とP-3C哨戒機を派遣し、警戒監視した。

中国測量艦の怪しい動き

翌24日、自衛隊はロシア太平洋艦隊のステレグシチー級フリゲート艦レーズキィ(プロジェクト20380)を、本州の北東約40キロの海域で発見した。この船は狭い津軽海峡を通り、日本海に向かって航行した。

防衛省によれば、すがしま型掃海艇いずしまと、えのしま型掃海艇の1番艇えのしまが、このロシア艦船2隻を監視・情報収集した。

ロシア国防省は短い声明を出し、レーズキィはロシアの極東カムチャッカ半島沖で演習を行い、26日にウラジオストクの母港に戻ったと発表した。

また、25日には日本最西端の有人島与那国の南約40キロの海域で中国海軍に所属する636A型またはシュパン級測量艦マオイシェンも目撃されており、防衛省はあぶくま級護衛艦JSとねを派遣すると共に、P-3C哨戒機をスクランブル発進させ、警戒監視を行ったことを発表した。

統合参謀本部によると、マオイシェンは、中国潜水艦のための海底地図製作を任務としており、その後、日本が実効支配する尖閣諸島の西を通り、東シナ海に向けて航行した。

22日に日本の南西諸島を経由して西太平洋に入ったシュパン級測量船チェン・ジンランも同じ海域を航行したと、統合幕僚監部は別の報告書で伝えた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中