最新記事
ウクライナ戦争

ウクライナ軍のドローンに悩むロシア黒海艦隊...「地面に艦船の絵」を描いて敵の目を欺く新作戦を決行

Russia Painting Decoy Submarines at Black Sea Ports Amid Mounting Losses

2024年3月24日(日)07時30分
エリー・クック
クリミア半島のロシア艦船

クリミア半島のロシア艦船(2021年7月) Gregory Gus/Shutterstock

<ウクライナ軍のドローン攻撃などに悩まされてきたロシア海軍は、黒海艦隊の「モスクワ」以降も何隻もの艦船を失っている>

ロシアが誇る黒海艦隊は、ウクライナの水上ドローンなどによる攻撃でたびたび大きな被害を受けてきた。これに業を煮やしたのか、最新の分析によればロシアは、軍にとって「最も高価な資産」を「偽装」する作戦を開始したようだ。艦船を黒く塗って小さく見せたり、地面に偽物の艦船の絵を描いて敵の目を欺こうとしていることが、現地の衛星写真から明らかになったのだ。

■【写真】ロシア黒海艦隊、「地面に船の絵」を描いて敵のドローンをかく乱...実際に描かれた艦船の絵

ロシアは、ウクライナ東部を蛇行する前線に散開して進軍しているが、ウクライナは黒海とクリミア半島全域で、ロシアの資産を標的にすることに成功している。クリミア半島はロシアが10年前に掌握し、ウクライナが奪還を誓っている地だ。

そこでウクライナは長距離ミサイル攻撃に加え、開戦後に自国で開発した水上ドローンを効果的に使用しており、ロシアは撃退に苦労している。ウクライナはまた、黒海周辺で無人航空機による空爆も日常的に行なっている。

英国政府は3月20日付の分析で、ロシアが黒海艦隊の艦船を黒いペンキで偽装し、「軍艦をより小さく、重要ではない存在のように見せかけている可能性が高い」と述べている。また英国防省はソーシャルメディアで、「ウクライナの無人航空機オペレーターを混乱させる目的か、波止場の地面に艦船のシルエットが描かれている」と報告している。

英国防省は、ロシアのノヴォロシースク基地の衛星画像を共有。その画像でロシアのキロ型潜水艦の横に見えるのは、おとりとして描かれた小さな艦船のシルエットだと説明している。

水上ドローン「マグラV5」がロシア揚陸艦を撃沈

ウクライナによれば、ウクライナの水上ドローン「マグラV5」は2月、黒海艦隊への攻撃を成功させ、ミサイルを搭載したコルベット艦「イワノヴェツ」を破壊した。また同じ2月には、無人水上艇でロシアの大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を撃沈し、さらに数隻の揚陸艦を攻撃している。そして3月には、ロシアのプロジェクト22160型哨戒艦4隻のひとつ「セルゲイ・コトフ」を、マグラV5が攻撃しているように見える動画が投稿された。

このようにウクライナは、クリミア半島周辺のロシア艦船を水上ドローンが攻撃する劇的な動画を頻繁に公開している。

ウクライナは以前にも、黒海艦隊旗艦「モスクワ」を対艦ミサイルで撃沈している。また2023年9月には、クリミア半島のセヴァストポリ港に停泊していたロシアの軍艦と潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌ」を攻撃するため、西側諸国から供与された長距離空中発射ミサイルを使用したと報告している。ウクライナは当時、ロシアにとってロストフ・ナ・ドヌの損失はとても不名誉なことだと述べていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中