最新記事
ロシア

大統領選直前、プーチン陣営を揺さぶる ウクライナの猛攻──「ロシアは安定していない」

Putin Suffers Blow in Ukraine War Days Before Election

2024年3月14日(木)17時51分
ジョン・ジャクソン

選挙では大勝するとみられるプーチンだが、問題はその後だ(3月12日、モスクワ) Sputnik/Gavriil Grigorov/Pool via REUTERS

<大統領選大勝は確実だが、戦争継続への支持は減っており、揺さぶられればプーチンに対する支持が減る可能性もある>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にはここ数日、悪いニュースが続いている。ウクライナから飛来して60機以上の大規模なドローン攻撃で、ウクライナと隣接するベルゴロド州の連邦ビルと石油精製所が被害を受けた。また反プーチンの外国人義勇軍が複数地点で国境を侵してロシアに入り、小さな村を掌握した。

おりしも、ロシアでは3月15日~17日に大統領選挙が行われる。こうした悪いニュースは、国民が投票に向かう数日前に飛び込んできたことになる。悪夢だ。

 

今回の大統領選挙で、プーチンは大勝を予想されている。世論調査によれば、欧米からは不正選挙の疑いがあるとはいえ、プーチンは国民から大きな支持を獲得してきた。

だが同時に、プーチンがウクライナに仕掛けた戦争に対する支持は減少しており、最近のネガティブなニュースにプーチン陣営は神経をとがらせているだろう。

【動画】なぜこんなに遠い? ロシアウォッチャーの間で話題になった、プーチンと聴衆の距離

「プーチンに対する国民の支持は、プーチンの存在が、1990年代の危機の時代とは対照的な安定した時代の柱であるというイメージの上に成り立っている」と、ソビエト崩壊後の国際政治の専門家であるジェイソン・スマートは本誌に語った。「プーチンは国民に、ロシア国土に対する支配は万全だと思わせたいのだが、親ウクライナ義勇軍によるロシア南部への侵攻は、それがかなりあやしい状態にあることを示す強力な証拠となる」

開戦以来最大のドローン攻撃

ウクライナのために戦うロシア人で構成される義勇軍のグループ、自由ロシア軍団とロシア義勇軍団は12日、ロシア国内を「攻撃中」であると発表した。

ウクライナとロシアの情報筋によると、軍団は装甲車でロシア西部のベルゴロド州とクルスク州に入ったという。ロシアのテレグラムチャンネル「War Gonzo」は、戦闘員たちは迫撃砲と大砲で援護されていると伝えた。

自由ロシア軍団はその日のうちに、クルスク州のティオトキノ村を完全に掌握したと発表した。ロシア国防省はその前に、「ウクライナのテロリスト集団」による越境攻撃は「阻止した」と主張していた。

義勇軍による軍事行動のニュースの前に、ロシア国内で複数の夜間ドローン攻撃があったことも伝えられていた。ロシア当局の報告によると、ウクライナのドローンはロシアの9つの地域を標的としており、ウクライナによるロシアへのドローン攻撃としては開戦以来最大規模だったとみられる。

ドローン攻撃の標的のひとつは、ベルゴロドの政府庁舎だったようだ。同市の市長は後に、この攻撃で4人が死亡したと報告した。

アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)は9日、ウクライナ軍が前夜ロシアのロストフ州でドローン攻撃を行ったという報告があり、長距離レーダー探知機A-50を改修する航空機工場を攻撃した可能性があると発表した。この攻撃の結果、A-50が2機破壊されたという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、インフラ被災で遅れる支援 死者1万

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中