最新記事
防空システム

ロシア軍がウクライナで初めて米供与のパトリオットを破壊、同時に米軍に犠牲者が出た?

US Troops 'May Have Been Killed' in Strike on Patriots in Ukraine: Russia

2024年3月12日(火)18時28分
ブレンダン・コール
パトリオット

ウクライナの空の最強の盾が破壊された?  Preston Stewart/YouTube

<パトリオット2基を破壊して、そこにいた米軍兵士も死んだ、というロシアの主張はどこまで本当なのか。もしロシア軍にパトリオットを破壊することができるのなら、ウクライナは防空も危うい>

アメリカがウクライナに供与した対空防衛システム「パトリオット」がロシア軍の空爆を受け、米軍兵士が死亡した──ロシアの国営メディアが、ロシア下院議員の発言として報道した。

米国防総省の報道官は、この主張に対する反応を聞かれ、「その戦闘には米軍からは誰も参加していないので、アメリカ人の負傷者はいないと断言できる」と本誌に述べた。

 

一方、ロシアが占拠しているクリミアから選出されたロシアのミハイル・シェレメト下院議員は、ロシアの国営通信社RIAノーボスチに対して、ロシア軍はドネツク州でパトリオット防空システム2基を攻撃したと述べた。

【動画】ウクライナのパトリオット2基をロシア軍のミサイルが攻撃したとする映像

「対空防衛システム『パトリオット』が破壊された際に、米軍兵士たちも殺された可能性がある」と、シェレメトは語った。

だが、複数のソーシャルメディアユーザーは、破壊されたと報じられているのは、1基4億ドル(約590億円)とされるパトリオットのシステム全体ではなく、パトリオットの発射機2つだという点を強調している。こちらの価格は、1つあたり1000万ドル(約14億8000万円)だ。

本当は米兵がいる

RIAノーボスチによるとシェレメトは、パトリオットシステムは技術的に使いこなすのが難しいため、「アメリカ軍の専門家たちがひそかにウクライナに派遣され、運用している可能性がある」と述べた。

実際は米軍の兵士がウクライナの戦場に派遣されているとシェレメトは主張するが、アメリカは努めてこの戦争に直接関与しない立場だ。本誌で独自に確認することはできなかった。

シェレメトの発言の前にも、テレグラムなどのロシア語メディアでは、3月9日にドネツク州のポクロウシク地区で、ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」による攻撃があったとの臆測が広まっていた。

ロシア国防省は、ミサイル着弾の瞬間を捉えたとする動画を公開し、その標的は当初、S-300ミサイルシステムだとしていた。

だが、ロシアとウクライナ双方のメディアは、「パトリオットの発射機とみられるもの2つが爆発し、現場にいた要員たちはほぼ間違いなく死亡した」とするフォーブス誌の記事を引用して伝えている。この記事によれば、その前にも、「数百マイル離れたところから発射された可能性がある、ウクライナ軍の車列を直撃する攻撃」があったとのことだ。

フォーブス誌の記事によれば、アメリカが供与した対空防衛システムにロシア軍が一部でも攻撃を加えることができた事例は、今回の戦争でこれが初めてだという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中