「潔白とは言ってない」──トランプ出馬を認めた米最高裁判断のウラを読む
Supreme Court's ballot ruling wasn't a home run for Donald Trump
トランプは歴史的勝利を勝ち取ったが、まだこれで終わりではない REUTERS
<トランプは議会襲撃事件についての事実上の潔白証明を求めていたが最高裁はその点には踏み込まなかった>
米連邦最高裁は3月4日、ドナルド・トランプ前米大統領の2024年米大統領選への立候補は可能との意見書を公表した。だがトランプにとってこれは、必ずしも起死回生のホームランとはいかない。
今回の判断は、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件への関与を理由にトランプの予備選立候補資格を認めなかったコロラド州最高裁の判断を覆すものだ。連邦最高裁の判事9人全員が「誰が大統領選挙に立候補できるかを個々の州が選ぶことはできない」という意見で一致した。
ただし、立候補の資格はく奪条項の提供範囲については、判事らの意見が分かれた。また判事らは、トランプが連邦議会襲撃事件に関与したかどうかの判断には(その機会があったにもかかわらず)踏み込まなかった。
バラク・オバマ元米政権下で倫理担当法律顧問やチェコ共和国駐在米大使などを歴任したノーム・アイゼンは本誌に対し、「連邦最高裁には、連邦議会襲撃に関するコロラド州裁判所の判決に直接対処し、(同じく立候補資格なしと判断した)メイン州とイリノイ州の判決も覆すという選択肢があったが、彼らはそれを行わなかった」と指摘した。「そのこと自体が力強いメッセージだ。これまで連邦議会襲撃について行われてきたあらゆる捜査がトランプの関与を認めてきたことを、今回の判断は暗に認めている」
「暴動関与」についての潔白証明はなし
法律の専門家たちは、連邦最高裁がトランプの連邦議会襲撃への関与について言及しなかったことに注目した。コロラド州最高裁の過半数の判事は、トランプ側の主張が本質的に、合衆国憲法修正第14条第3項(資格はく奪条項)はあらゆる官職にはあてはまるが「大統領だけは例外」と判断するよう求めるものだと感じていた。
元連邦検事のマイケル・マコーリフは本誌に対して、「連邦最高裁は今回の判断の中で、『暴動や反乱に関与した者』の定義や、コロラド州の裁判所がトランプを『暴動や反乱に関与した者』と事実認定したことについては異論をはさまなかった」と述べた。「これらの事実認定は存在しているが、連邦最高裁は今回、コロラド州という一州に合衆国憲法修正第14条第3項に基づいて資格はく奪を行う権限はない、という点のみについて判断を下した」
オバマ元米政権で訴訟長官代行を務めたニール・カティヤルも同意見だ。ただ今回の連邦最高裁の判断はトランプにとって勝利ではあるものの、全面勝利ではない。トランプが求めていた「暴動への関与」の否定はなく、これが将来的にトランプにとって不利に働く可能性があると指摘した。