最新記事
EU

「最悪の事態に備えるべきだった」...欧州が「トランプ再選」に今からでも真剣に向き合わなくてはならない理由とは?

EXISTENTIAL STAKES

2024年3月6日(水)19時00分
フィリップ・ルグラン(元欧州委員会委員長経済顧問)

プーチンの支援を受けたハッカーは電力網や政府のデータベースなど重要なインフラを標的にし、ロシアの戦闘機はスウェーデンやエストニアの領空を侵犯している。

従って、ヨーロッパ諸国は国防費を増額しなければならない。少なくとも、GDP比2%に引き上げるというNATOの目標を達成する必要がある。

ドイツのショルツ首相は22年2月に外交・防衛政策の「ツァイテンヴェンデ(転換点)」を宣言したが、軍隊の近代化に1000億ユーロを投じる計画は実行されてない。しかも、23年の国防費はGDP比1.2%にとどまる見込みだ。

資金源も必要だ。ブルトン欧州委員(域内市場担当)は1月に、武器を共同で調達・増産するために1000億ユーロの防衛基金の設立を提案した。これはブルトンの盟友であるフランスのマクロン大統領の支持を得ているとみられる。

ヨーロッパの経済規模を考えれば、EU諸国はウクライナおよび自国の防衛ニーズの両方を満たすのに十分な武器を生産できるだろう。ただし、そうした投資には時間がかかり、各国政府の持続的なコミットメントが必要になる。

欧州議会選挙が6月に迫り、国防は有権者の関心の的になるだろう。ヨーロッパの存亡は軍備再強化という大ばくちに懸かっている。

©Project Syndicate


240227p16_Rugran.jpgフィリップ・ルグラン
PHILIPPE LEGRAIN
元欧州委員会委員長経済顧問、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)欧州研究所上級客員研究員。著書に『彼らと我ら:移民と住民はどうすれば共栄できるか』など。

20250204issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月4日号(1月28日発売)は「トランプ革命」特集。大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で、世界はこう変わる


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏当局、ディープシークに質問へ プライバシー保護巡

ビジネス

ECB総裁、チェコ中銀の「外貨準備にビットコイン」

ビジネス

米マスターカード、第4四半期利益が予想上回る 年末

ワールド

米首都近郊の旅客機と軍ヘリの空中衝突、空域運用の課
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中