「最悪の事態に備えるべきだった」...欧州が「トランプ再選」に今からでも真剣に向き合わなくてはならない理由とは?
EXISTENTIAL STAKES
プーチンの支援を受けたハッカーは電力網や政府のデータベースなど重要なインフラを標的にし、ロシアの戦闘機はスウェーデンやエストニアの領空を侵犯している。
従って、ヨーロッパ諸国は国防費を増額しなければならない。少なくとも、GDP比2%に引き上げるというNATOの目標を達成する必要がある。
ドイツのショルツ首相は22年2月に外交・防衛政策の「ツァイテンヴェンデ(転換点)」を宣言したが、軍隊の近代化に1000億ユーロを投じる計画は実行されてない。しかも、23年の国防費はGDP比1.2%にとどまる見込みだ。
資金源も必要だ。ブルトン欧州委員(域内市場担当)は1月に、武器を共同で調達・増産するために1000億ユーロの防衛基金の設立を提案した。これはブルトンの盟友であるフランスのマクロン大統領の支持を得ているとみられる。
ヨーロッパの経済規模を考えれば、EU諸国はウクライナおよび自国の防衛ニーズの両方を満たすのに十分な武器を生産できるだろう。ただし、そうした投資には時間がかかり、各国政府の持続的なコミットメントが必要になる。
欧州議会選挙が6月に迫り、国防は有権者の関心の的になるだろう。ヨーロッパの存亡は軍備再強化という大ばくちに懸かっている。
フィリップ・ルグラン
PHILIPPE LEGRAIN
元欧州委員会委員長経済顧問、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)欧州研究所上級客員研究員。著書に『彼らと我ら:移民と住民はどうすれば共栄できるか』など。
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